龍のひげ’s blog

子供たちの未来のために日本を変革する

映画『告白』

中島哲也監督の映画『告白』を見た。ある程度、映画を見慣れている人は誰でもそうだと思うが、いい映画には予感がある。”この映画は見るべき”だと、誰かが語りかけてくるかのような匂いがするのである。
私も3ヶ月ほど前から、原作を読む以前に、何となく『告白』が気になっていた。それで3日ほど前にアマゾンで原作を買って3分の2ほど読んだ段階で、映画を見た。私は原作を読みながら、映画の方が面白いのではないかと想像したのだが、まさにその通りであった。映画が原作を上回ることは、皆無ではないが稀である。
映画『告白』にキャスティングされている中学生の子供たちの顔を見ているだけで、中島哲也監督の感性が伝わってくる。映画全体はくすんだ暗い色合いに覆われているのだけれど、沈んでいかないのである。どこか奥の方から湧き出る生命力というべきか、未来を照らす光をじっと見ているような抑制された喜びがこの映画にはある。音楽の選曲がまた素晴らしい。
重さと軽さ、暗さと明るさ、善と悪が、『告白』の中で拮抗しながらも、互いに打ち消し合うことなく、まさにこの映画で頻繁に映し出せれる空の雲のように漂い拡がってゆくのだ。ドストエフスキー小説『罪と罰』の主人公、ラスコーリニコフの言葉が引用されているのもとても印象的であった。
才能とは愛しむべき対象である。何ものにも迎合しない偉大な才能だけが薄暗い世界に一筋の光をもたらし、多くの人間が歩むべき新たな道を指し示し、感得させることが出来るのであろう。中島哲也は、現在の日本映画で私が才能を感じる唯一の監督と言えるのかも知れない。いい映画を見ると、生きていて良かったと思う。