龍のひげ’s blog

子供たちの未来のために日本を変革する

腐敗のバロメーター

くどいようだが、新聞社のトップが内部情報を暴露されたことに対して、窃盗で告訴という感覚が理解できない。偽計業務妨害や特別背任についても同様である。私も状況を完全に把握している訳ではないが、渡辺会長が言うところの内部文書流出については、清武氏が巨人軍代表の地位を解任された後に、夜中にこっそりと事務所に侵入して、金庫の中から過去の契約資料を無断で持ち出したということであれば話はわかる。そうであれば窃盗であり、住居侵入罪ということにもなろう。しかし、そういうことではないのではないのか。
清武氏が巨人軍代表であった時期に、仮に契約書をコピーしていたり、内容を手帳にメモしていたり、あるいは単に記憶していただけのことであれば、それらを解任された後に公表したとして何で窃盗なのか。公表した内容が虚偽であるなら風説の流布による偽計業務妨害となる可能性はあるであろうが、真実であれば犯罪性の要件を備えているとは言えない。特別背任についても会社法第960条により、取締役などが、自己もしくは第三者の利益を図り又は株式会社に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、当該株式会社に財産上の損害を加えた時に成立するものである。この条文におけるポイントは、“財産上の損害”であって、清武氏が巨人軍選手の契約内容を暴露したからといって何ら読売グループの財産上の損害に結びつくものではないではないか。大企業の創業家3代目の馬鹿息子がカジノに100億円以上もの金をつぎ込み、その内の数十億円を関連会社に穴埋めさせて損害を与えた、という事例が、特別背任という犯罪が成立する立派なお手本なのである。渡辺会長は、コーチ人事についてはうるさく口出ししながら「二塁とショートはどっちが一塁に近いんだ」と聞くほど野球オンチであるとのことだが、法律についても相当にオンチなようである。読売側の朝日新聞や清武氏に対する請求で、唯一、筋が通ると思われる内容は、過去の契約内容を暴露されたことによって今後の選手獲得に支障を来たすであろうことから球団経営上の損害を被ったと、民事で訴えることであろうが、それすらも真実を公表しているのであれば言い掛かりに近いもので本来であれば恐らく裁判で認められることはないと思われる。私がこの件にこだわる理由は、民事であれば感情も混じっていることであるから渡辺会長及び読売グループが、どのような理由で誰を訴えようと勝手であるが、刑事事件の扱いは別である。まさかとは思うが、この問題で警察が形式的にであれ、窃盗や背任で刑事告発を正式に受理するということであれば大変なことである。フィクサーか黒幕か、独裁者か何か知らないが、そんな非常識なことがまかり通るなら日本は実質的に北朝鮮と大差のない国であると世界のまともな国から蔑まれることになるだけであろう。個人的には、日本のマスコミが警察機構、司法と、どれだけ深く癒着し汚染されているかを知るバロメーターであると思われるので事の成り行きに非常に興味がある。退屈なドラマやバラエティ番組を見るより(そんなもの見ていないが)、よほど面白いから遠慮せずにどんどんやってくれ。今時、一般の家庭で新聞を2紙(読売と朝日)も購読しているのは希であろうから、そのぐらいの特権的楽しみを味わわせていただきたいものだ。私もまた半ば、自棄くそだ。
プロ野球の契約金問題については、それが初年度に一括して支払われているか、複数年に繰り延べて分割支払いされているかは、一見、どうでもいいことのように思われるが、派生的な問題の在り処を示唆しているように感じられる。単に契約金額の高騰化ということだけでなく、契約のあり方全般が問われる問題ではないかということだ。よく噂されるように、アマチュア監督に選手入団に際して多額の謝礼を支払ったり、あるいは選手の両親の借金を球団が肩代わりするなどの付帯条項の方が、球団としては表沙汰にはされたくないことであろう。プライバシーの問題だけでなく、そこは当然、金額が大きいだけに税制上の操作もあると思われる。供与や受取の事実そのものを隠すケースがあっても何らおかしくはない。読売が“センシティブな問題”を暴かれたと、刑事告訴までちらつかせながら、激怒している理由はそういうところにあるのだと思われる。要するに読売にとって、朝日の報道は非常に痛い所をつかれている訳である。公平に見れば、読売側の憤りもわからないではないが、それではたとえば民主党小沢一郎などの政治資金の疑惑報道はどうなるのだと言いたい。もちろん政治と野球では全然、次元が異なる話しではあるが、読売は小沢に対して、そこに疑惑があるのだから説明責任があると何度も繰り返し、紙面で訴えてきたではないか。それが我が身が追求される立場に晒された途端に、プロ野球の入団契約だけはセンシティブだから例外だという言い分は通らないのではないか。それを言うなら、不正や犯罪は皆、本質的にセンシティブである。もう一点述べれば、プロ野球の多額の契約金あるいは年俸は一企業と選手だけの問題だから、我々一般の人間(外野)があれこれと口出しすべきことではないと考えている人も多いと思われるので、そうではないことを簡単にではあるが説明させていただきたい。順序立ててよく考えれば誰でも理解できることだと思われるが、いかに金持ち企業であるといっても数億円あるいは10億円近い金を打出の小槌を振るように次々と簡単に捻出できるものではない。昨今のようにデフレの不景気下であれば尚更、そうである。そうすると読売のように球団とマスコミ経営を兼ねているような企業グループは、必然的に一部の大企業が売上げと利益が独占できるような利権構造を死守するべく、影に日向に世論誘導と政治介入に激しく突き進んでゆくこととなる。そしてそのしわ寄せは我々、末端の弱者に来ることとなる。ちょうど1年前の東北大震災、原発事故直後に、世間では節電ムードが盛り上がっているというのに、読売だけが開幕からナイターゲームを強行しようとして激しい批判を受けたことを記憶されている人は多いかと思われる。当たり前のことではあるが、読売の企業体質は何一つ変わっていないのだ。日本の全てのルールと善悪を、自らが決定できると考えているように見受けられる。見かけに騙されてはならない。全ては有機的に我々の生活と精神に結びついているのだ。社会問題を連関的に、自分の問題として認識、思考できるかどうかが現代人に要求されている知性だ。誰かに任せていると、とんでもないところに連れていかれるぞ。そういう時代なのだ。政治は腐り切っているから、国民の一人一人が声を上げなければならない責任がある。