龍のひげ’s blog

子供たちの未来のために日本を変革する

生きること、書くこと92


世界的な金融危機の影響で日本の景気は益々悪化しているように思われるが、そもそもアメリカの金融破

綻以前から既に日本の経済状態は最悪の状態にあったのだから真相をごまかしてはならない。

日本の不景気は構造的な問題が大きい。ここ数年大企業だけは業績が良かったものの、円高と中国、イン

ドなど新興国の急速な景気減速の影響で、トヨタを初めとして日本の屋台骨を支えていた輸出依存型の少

数優良企業までもが赤字に転落した。政府はこれまで世界的な競争力を有した大企業が海外に流出、移転

することを恐れて税制において優遇し、圧倒的多数の中小、零細企業を実質的に見捨ててきたつけが回っ

てきているのである。

今頃になって「定額給付金」で1万円ほどの金を国民にばら撒くなど、あまりに馬鹿げている。国民多数

の家計は火の車である。山火事を立ち小便で鎮火させるかのような政策は単に無駄遣いのパフォーマンス

に過ぎない。

言うまでもないが海外の状況は日本国内でコントロール出来ない。コントロール出来ないもの(輸出)に

依存しているから今日のような最悪の状態を招くのである。日本が少しでも経済的に立ち直るためには、

内需を活性化させるべく全力を注ぐ方向性をもっと前から打ち出しているべきであった。日本の政治は予

測や見通しが甘いというか、基本的に欠落しているので全てが後手の対応である。内需の活性化には構造

的な問題が立ちはだかる。国内は全体的に消費が低迷しているが地方の窮状が甚だしい。日本の景気がア

メリカに振り回されるのと同じように、地方の景気は中央(東京)に強く影響される。地方は大都市の景

気が上向き、金や物の動きが活発化することによって、余波として2次的に潤う。東京の景気がすこぶる

悪いのに九州や東北だけが元気がいいという状況は考えられない。権力と経済の首都圏への一極集中、霞

ヶ関からの中央統制、大都市から地方への金や情報の流れなどが日本型システムの根幹を成している。景

気がよい時にはそれなりに安定した秩序と繁栄をもたらす、それら日本のシステムは、今日のように世界

的な大きな時代の転換期には国全体が機能不全に陥ってしまって再生が利かなくなる。なぜなら一元的に

管理化された一方通行の社会だから地方や国民など末端部分から、植物が親木が枯れても挿し木で復元す

るような機構になっていないからである。単に自民党か、民主党かという政治上の二者択一の問題ではな

く国民全体の“国家意識”から変わってゆかなければならない必要性に迫られていると思われる。

しかし自分の頭で考えることが苦手で、誘導ばかりされてきた日本人は“国を想って”その次に“自分を

立てる”という思考回路がない。それは国家とは絶えず戦争をしようと企む“悪”であるから、悪を排除

して全体的な利益より自分のことだけを考えておけばよいのだという利己(保守)的なイデオロギーによ

って導かれてきた結果であるとも言えるのではないか。先日もあるTV番組を見ていると、田母神氏をゲ

ストに招いて自衛隊について話しをしている場面で、ある有名司会者が小泉元首相であればその気になれ

ば戦争を起こすことも出来たと発言していた。冗談ではなく、本気でそのように考えているようであっ

た。なぜなら田母神氏が「そんなことはないと思いますよ。」とごく当たり前のコメントを返しているの

に「いや、小泉さんほどの才能のある政治家だったら一気に戦争の状態までもって行くこともできたはず

だ。」と繰り返していたからである。私は正直なところ、その司会者は頭がおかしいか視聴者を馬鹿にし

ているのではないかと感じた。同局で昨年末に放映された、北野武東条英機役で出演していた長編ドラ

マ『あの戦争は何だったのか』を見たが、全体主義的な思想が深く蔓延していたあの当時でさえ日本は開

戦を決断するまでに実際のところはかなり大きな抵抗があったのである。満州の利権や石油資源などどう

しても手放せなかった国家の生命線と世界的な政治力学の中で日本は、ほとんど自殺をするような悲壮な

覚悟で戦争へと追いやられていった。1941年の11月末まであれほど逡巡、しり込みしていながら1

2月8日には一転、勇猛果敢に真珠湾攻撃へとよくも踏み切れたものだと感心したほどである。ともかく

日本は元々、好戦的な国ではない。ましてや今の時代に国民へのパフォーマンス能力の優れた政治家が戦

争を引き起こすことなど考えられない。そのように考える人間は国民の良識をあまりに低く見積もり過ぎ

ている。また単に戦争に巻き込まれないということであれば本質的には日米関係の外交問題であって、自

衛隊や国内世論とは無関係のはずだ。100年先のことはわからないが、少なくとも10年や20年は日

本が自衛隊を使って戦争をする可能性は0である。しかしそのTV司会者と同じように、明日に大地震

起きるかも知れないというレベルで1年後に太平洋戦争に突入したような状況が繰り返される可能性が少

なからずあると考えている人々が日本にはたくさん存在している。そのような人々の精神構造は基本的に

戦争への危機に“依存”している。だから認知が歪んでいる。平和は万人に共通の願いであるが、認知が

歪んでいる人間と一緒にされたくはない。日本は、“戦争への危機”があらゆる洗脳や誘導と結びつきな

がら、一部の人々の利権や権威を維持している点において特殊な国家であると言えるのではないのか。