龍のひげ’s blog

子供たちの未来のために日本を変革する

100%無能とは言えない総理

ほら見ろよ、私が危惧した通りだ。もう早速、TPP交渉でアメリカと齟齬が生じているじゃないか。野田首相だけではないだろうが、日本の政治の欠点で、国内における阿吽の呼吸というのか、以心伝心が外交でも通ずると心のどこかで信じているからこういうことになるのだ。普段、茶番みたいな政治演劇ばかり興じていて、いざ外交の舞台で態度を変えようと思ってもそう簡単にいくものではない。基本的なコミュニケーション能力の問題だ。欧米人相手に交渉する時には、まあ中国人相手でも同じであろうが、曖昧ではない的確な表現で言ったか、言わないか、それが全てだ。この程度のことは言わなくとも“常識的に”わかってくれるであろうという思い込みは通用しないのである。私は外交交渉ではないが、離婚交渉でそういう心構えの必要性を徹底的に身に付けた。言わなくてもわかってもらえると考えることは、甘え以外の何物でもないのである。確かに日本の伝統と言えるかどうかは別として、禅宗において“不立文字”の教えがあるが、それと国の外交は、あるいは人と人の交流であっても別次元の問題である。悟りの境地を伝えるように利益をわが身に誘導することは出来ないということだ。野田首相の言葉を見ていても資質上の問題が感じられる。たとえば15日の参院予算委員会野田首相は、TPPに関し“関係国との事前協議の結果によっては参加しない可能性もあるとの認識を示した”と時事通信が伝えている。これは自民党山本一太氏の「交渉に参加しない選択肢もあるのか」との質問に対し、野田首相が「何が何でも、国益を損ねてまで参加することはない。百パーセント、とにもかくにもということではない。」と答えた内容を、“参加しない可能性あり”として報じられたものだ。確かに機械的に発言された言葉を読めばそういうことになるのかも知れないが、行間というのか、言葉の裏を解釈すれば反対の意味合いが強いことは明らかだ。噛み砕いてわかりやすく野田首相の本音を言い直せば以下のようになるであろう。
国益を損ねてまで参加などとは、私の立場で言えるわけがないではないか。何が何でも、百パーセントとは言わないが、まあ恐らく99.9%ぐらいは日本の国益に関わらず、参加せざるを得ないでしょうね。”
つまり婉曲的に、自己保身も兼ねた言い回しで、絶対参加表明しているのと同義なのだ。マスコミはわかっていながら都合の良い大衆誘導に加担しているのであろう。しかし政治本来の使命から考えれば、言うまでもないことだが、政治の言葉とは国民に対して責任を持たなければならないのである。野田首相オバマ大統領に「自分の判断で参加を決断した」と偉そうに伝えているのであるから、“国益を損ねるような条件になる時には、自分の判断で離脱する”と、はっきり言えなければならない。あるいは、“日本の国益を最優先させなければならないことは当然のことですが、日米関係の重要性に鑑みれば参加辞退は現実的には難しい選択だと考えます。”と、仮に私が首相でTPP推進の立場であれば、そのように答えることであろう。要するに野田首相の答弁は、本人に自覚がないだけで、ほとんど嘘をついているのと同じなのである。言葉の選択一つを取って見ても、野田首相は無能で不誠実である。前菅首相と五十歩百歩であり、本質的には何も変らない。国民を騙して丸く治まっている間はよいであろうが、アメリカは追従してくれているから条件交渉では手加減してやろうなどと考える甘い国ではない。とことん全面的に自国に都合のよいルールに従わせようとするであろう。野田首相のように婉曲的な裏側言葉しか使えない政治家が太刀打ちできるわけがない。野田首相の政治能力は安全運転以前の問題だ。赤信号を見て赤、青信号を見て青と認識することが世界共通のコミュニケーションの出発点だ。赤信号を見て、必ずしも青でないとは言えない、とか黄の可能性も排除できないなどと言っていると遠からず間違いなく大事故につながることであろう。そもそもTPPは対象分野の全品目が完全自由化されることを前提としているはずであるのに、日本に都合の良い妙な希望を持ち合わせながら交渉参加表明などするから、初っ端からアメリカと食い違いが生じるのである。やはり野田の運転する車には怖くて乗れない。早く降ろしてくれ。いや、そうじゃない。我々国民には降りるところがないのだ。一刻も早く、運転手を変えてくれ、だ。