龍のひげ’s blog

子供たちの未来のために日本を変革する

マスコミと巨人

どこの企業にも少なからず内紛はある。だから一概にどちらが間違っていて、どちらが正しいと“外野”に決め付けることはできないが、巨人軍コーチ人事の問題で渡辺恒雄会長が元専務の清武英利氏を読売新聞グループ本社と共同で1億円の損害賠償請求を行なったことは、私は“大人気ない”と思う。名誉を毀損されたと言うのであれば、会社は持ち出さず、渡辺会長個人が訴えるべきであったのではないか。清武氏が記者会見で告発した内容は、会社の秘密情報と言えるほどのものではなかろう。コーチ人事案が秘密情報だと言うなら、新聞や週刊誌の内容などはほとんど全て秘密情報に類するものである。株価操作のインサイダー情報であるならまだしも、コーチ人事を秘密情報であると言っていれば人気商売のプロ野球など成り立たないと思うのだが。また清武氏の会見によって読売巨人軍の名声、信用、ブランドイメージが著しく毀損されたと言うが、どちらかと言えば、渡辺氏が読売新聞という会社を連帯させて民事訴訟を提起した行為の方がはるかに読売巨人軍ひいてはプロ野球全体のイメージを損なっているのではないのか。傍目には絶大な個人の権力と組織力で、意に染まない反抗的な人間を“破滅”へ追いやっているようにしか見えない。
コーチ人事に関しては、私の素人考えだが、恐らく江川卓氏の招聘そのものが根本的な対立軸になっているのだと推察される。巨人軍内部で、江川氏入閣に対して、江川氏が選手として巨人に入団した当時の不透明な経緯などから激しく抵抗感を持つ勢力が存在するのではないのか。清武氏もその代表格であったのかも知れない。江川氏がこれまで巨人にフロントとして迎えられなかった事情は過去の因縁が未だ完全に消滅していないからであろう。ところが恐らくは、さすがの巨人もここ数年は観客動員数や視聴率で陰りが見えてきたのであろうが、背に腹はかえられぬとばかりに原監督以上にスター性がある江川氏を引き入れざるを得ないと渡辺氏は考えたのであろう。“悪名は無名に勝る”とは、渡辺氏が口にしそうなセリフである。但し、その判断そのものは球団の経営的方針とすれば間違っているとは言えないし、寧ろ真っ当な感覚に基づいているとも見れる。所詮は人気商売なのだから選手だけでなく、客を呼べる監督やコーチを招聘しようと考えることは当然である。当然であるが一旦、こうなってしまった以上、江川氏の巨人入りはイメージ的にも益々難しくなったであろう。江川氏と巨人との悪縁はよほど根深いのか、再び第三者を巻き込み今回は訴訟として繰り返されているのだ。
しかし結局、個人的にはどうでもいいことである。私は、日本からプロ野球がなくなっても構わないとすら考えている。日本経済の悪化や政治の不在、それらに伴う国民生活の劣化は、有名選手の年棒が10億円などという興行を許容できるものではなくなりつつあるように感じられる。渡辺氏はインタビューで、消費税引き上げについても各新聞社がより連携を深めて政治に働きかけるべきだと、悪びれることもなく、のうのうと発言していた。巨人軍のコーチに誰を招聘しようと勝手だが、こういうことを平気で言ってのける感覚には問題が大きい。新聞社としての報道の使命や責任を履き違えているのではなかろうか。読売グループだけのコンプライアンスではない。マスコミ全体の報道のあり方としての倫理を、この問題を契機として問い直すべきではなかろうか。再販制を含め、根本的なマスコミ改革に着手すべきである。政治家が多額の税金を使いながらマスコミに対して物を言えないのであれば、渡辺氏に恭順の意を示し、次の選挙で落選した後は巨人軍のコーチにしてもらえばよい。