龍のひげ’s blog

子供たちの未来のために日本を変革する

0.1%の中間層

政治家の言葉を注意深く聞いていると、見えてくるものがある。何が見えるかと言えば、その言葉の発信源だ。たとえば私は少し前から、野田首相が使う“中間層”という言葉がどうも気になっていた。「中間層の厚みを増していく社会の実現を図る」などとして発言される。この“中間層”という言葉は、私が直感的に感ずるところによれば、野田首相のものではない。恐らくは財務省の官僚が常用している言葉であり概念なのだ。その官僚言葉を野田首相は自分なりに咀嚼しないで使っているから違和感が生じているのだと思われる。要するに野田首相は、前菅首相と同様に、基本的に何もわかっていない人物なのである。
今の日本に中間層と呼び得る経済階層が存在するだろうか。机上の理論で政策を立案する高級官僚の頭の中にだけに存在する概念ではないのか。中間層とは何を指しているのか具体的に説明していただきたいものだ。現在、日本には上場企業が第一部、第二部、マザーズを合わせて2,286社存在する。上場企業社員の平均年収は約600万円のようである。600万円で家を立てて、子供二人を大学までやれるかとなると現実には難しいであろう。妻も共稼ぎで働いていたり、夫婦の親の世代、子供から見れば祖父、祖母の経済的な援助があって何とかそれなりに生計を成り立たせている家庭がほとんどではなかろうか。社会全体で俯瞰してみても、老齢者の豊かな貯蓄が後ろ盾となって、30歳代や40歳代の家庭が存立し得ている構図はあると思われる。しかしほとんどの老齢者は年金以外に収入がないのであり、子供や孫のために援助するにも限度がある。一時的に年間、600万円や700万円の収入を得ていても、リストラされたり会社が倒産して、親や親類にも金の無心が出来なくなり、家を取られたり一家離散という悲惨なケースもかなり増加しているのではないかと推測される。しかしそれでもまだ、上場企業に勤めていて年収平均600万円の身分は日本全体から見ればかなり恵まれていると言えよう。少し古いが平成18年度の統計では、日本国内に株式会社数は約150万社存在する。飲食店や個人商店も含めた事業所数で言えば、約590万となる。割合で見れば、上場企業は全株式会社の0.15%、全事業所の0.04%に過ぎない。すなわち会社や事業所の数値割合で見れば、子供二人を親の援助を受けながらも何とか育てていける可能性がある区分階層は1%にはるかに満たないのだ。要するに国内の99%以上の仕事では経済的に結婚できないか、結婚しても子供を作る余裕がない状況に、日本は既に厳然として陥っているのである。その上で私が思うに、野田首相が財務官僚経由でありながら我が物のように使っている、“中間層”という言葉は、数値割合で見れば0.15%なり0.04%に過ぎない上場企業社員の家計レベルを想定して言っているのではないのか。野田首相の頭の中では、上流階級が高級官僚や成功している企業経営者、医者、有名スポーツ選手などであり、中間層が年収平均600万円クラスの上場企業社員であり、それ以下は全て下層階級として政治的に配慮する眼中にないのであろうと想像される。これでは99%以上をホームレス同様に見捨てているのと同じである。日本は既にアメリカと同じように、実質的に上位1%だけを対象とした政治になっているのである。それを民主党が強力に推し進めようとしていることが何とも腹立たしいではないか。人によっては上場企業は雇用吸収力が高いから、株式会社数や事業所数の割合だけで論じても意味がないという人もいるかも知れない。確かに厳密に言えばそうであろうが、上場企業の雇用吸収力もかなり低下している現実がある。私が住んでいる近くの某大手都銀の店舗は老舗店で有力支店であるにも関わらず、男性行員は支店長と支店長補佐の二人だけである。他には私が知るところでは外交で回っている若い女性行員が一人いるだけで窓口業務をしている女性たちは正確には知らないがおそらく皆、パートか派遣社員だと思われる。その支店長及び支店長補佐の話を聞く機会があったが、52歳か53歳ぐらいで辞めなければならないと言っていた。なぜかは知らないが、おそらく後がつかえてくるからであろう。定年が60歳となっていても、大企業ですら60歳まで働かせてもらえない現状がある。また正社員の数そのものがかなり縮小されている。正社員の数を徹底して圧縮しないとそれなりの平均年収が出せないのだ。正社員数を増やすと必然的に給料は低くなる。1年ほど前に事務所にNTTの光ネクストを導入して、NTT西日本の担当社員から直接話しを聞いたが、NTTですら定年は55歳だと言っていた。私の元妻は現在、上場している某衣料品量販店でパート勤務をしているが、その店舗でも正社員は店長一人だけであとは皆女性パートである。これが上位0.15%の実態なのである。今日の朝刊、及び夕刊に掲載されていた“65歳まで再雇用義務”の法制化案についてもいくらそのような法律を作ったところで肝心の国内企業にそれだけの経営体力を生じさせる経済環境を政治が作らなければ、正社員を減らし有期、無期に関わらず契約社員の割合を増やしていかなければならないことは目に見えているではないか。本当に日本の政治家と官僚は共々インチキである。野田もいやらしいほどに酷い。官僚思考と官僚言葉以外に何も持っていない。無理やり辻褄を合わせるだけのような法律を作るな。国民は馬鹿ではない。日本は既に江戸時代の身分制度と同じぐらい絶望的に画然と区分化された格差社会になっており、その体制構造がより強化されつつある。そしてその上位階層に位置するマスコミや官僚などが、国民を誤魔化しながら何とかその構造を死守しようと日々、頑張っておられるのである。何ともご苦労なことである。