龍のひげ’s blog

子供たちの未来のために日本を変革する

生活実感としての景気動向

景気の悪さは生活の中でもいろいろな場面で実感できる。たとえば大阪中心部の難波にある家電量販店(敢えて名前は出さないが)に、私は以前から年に何度かはパソコンなどを見に行っていた。買うまでには至らないが、最新機種のパソコンを見るのが好きなのである。大体、いつ行っても売り場の客はまばらであるが、その分、落ち着いてみることが出来た。何か聞きたいことがあれば、そばに店員がいないことが多いので探さないといけないのだが、店員を見つけて捕まえることができれば、それなりに(それなりであるが)詳しい説明を受けることは出来た。だが店員は客が聞く以上のことについて説明したり、聞いたり、勧めるようなことはなかった。一通りの説明が終わって自分の役目が終われば、そそくさとその場を離れて行ったものである。それがどこででも見られる量販店の客と店員の光景であろう。それがである。今から2~3ヶ月前のことであろうか、その量販店に行った時のことであるが、こちらから呼びもしないのに女性店員が私にまとわりついて離れないのである。いつもと同じようにそれほど気合を入れてパソコンを見ていた訳でもなかったのに、さっと寄ってきて矢継ぎ早に説明したり、私に質問したりしてくる。その店には10年以上前から行き続け、見たり買ったりしてきたが、そのようなことは初めてであったので、様変わりに驚いてしまった。何か気圧されるような雰囲気があった。女性店員は、買うまで帰さんぞという顔付きをしていた。その気迫に思わず、(こら、あかん。このままやったら何かいらんものを買わされてしまう。)と判断した私は、真剣に話しを聞いている振りをしながら、店員が一瞬、目を離した隙に電光石火の速さで身を翻し、その場を立ち去ることに成功したのであった。そのようなことがあったので、もうその店のその売り場には気分的に行きたくはないし、実際に行っていないので、そのような雰囲気の変化がその日だけ、或いはその店員だけのことであったのか、その後も売り場の常態となっているのかはわからない。わからないけれど常識的に考えれば、大体の想像はつく。今年の4月に消費税が8%に増税された以降、パソコンなどの売上が大幅に落ち込んでいるのであると思う。その落ち込み幅が店員の接客をこれまでとは一変させるほどの危機的な状態である可能性が高いと見れる。店員独自の判断や接客方法ではなくて、店長や本部の上層部からの厳命であると想像される。私の個人的な実感で言っても、今使っているパソコンが故障なく使えている間は、ちょっとぐらい魅力的な新商品が出てきても、10万円近くの金を出して新機種に買い換えようという気にはならない。それが今の一般的な消費者心理であると思う。もちろん消費税増税前からそのような傾向はあったであろうが、増税後にその購買ブレーキが確実に強まっているのだと見れる。店側の経営手法を分析してみれば、これまでは人件費をできるだけ抑えて、最小限の人員で売り場のマネジメントをしてきたのであろう。全ての客の商品に対する疑問や質問に即座に対応できるような態勢にするには人員を増やさなければならないし、人員を増やしたところでそれに見合った売上の効果が現れる訳でもない。極論すればパソコンなどの商品は、放っておいても買う客は買うし、買わない客は買わないものである。よって最小限に人員を配置して客の対応をさせる方法が、費用対効果において最上のパフォーマンスを示すことになったのであろうと考えられる。そしてそのようなスタイルがこれまでずっと採用されてきたというか、自然とその均衡点に落ち着いていたのでいたものである。ところが4月に増税して数ヶ月経過したあたりから、量販店はあまり買う気のないような客にまで何とか説得して買わせなければならないような状態に陥ってきたのではなかろうか。店員の目つき、態度が変わって当然である。つまりはっきり言って危機的な消費状況になってきたということである。もちろんその一店舗だけを見ていても日本全体の景況感はわからないが、私はそれが概ね妥当な見方であろうと考えている。
他にもある。これはここ数年の傾向で、消費税増税後に顕著になったという訳でもなかろうが、長年営業してきたコンビニの店が突然、廃業するケースが目立って増えてきている。これまでの常識では、商店街が歯抜けになったり壊滅状態になっても、コンビニだけは潰れないし、永続的にその場で営業し続けられるものだと誰もが考えていた。コンビニの経営は24時間営業で肉体的には大変であるが、高収益体質であり誰もが習慣的に利用する安定した需要の高さゆえに、都心部にある店がいきなり廃業になることなど到底、考えられなかったものである。それが3~4年ほど前からであろうか、コンビニの廃業が当たり前のような光景になってきている。都心部での廃業が目立つのは特にコンビニとガソリンスタンドである。但しコンビニに関しては確かにこれまで都心部においては過密状態にあった。ファミリーマートセブンイレブン、ローソンなどが僅か100メートルの範囲内に2~3店舗、200メートルの範囲内に3~4店舗が競合するというような密集状態であった。今はその密集が解消されてきて、消費者の生活圏における必要性に見合った店舗数に落ち着いてきている感はある。だから消費者の立場で見れば、さほど不便になっているということもないが、これまでの過密状態を満たしてきた業界全体の売上規模が落ち込んできていることだけは確かであると思われる。しかしコンビニ業界はその実態を、新規の契約加盟店が減少することを阻止するために誤魔化しているのではないかという疑いもあって、日本全体の消費の落ち込みが経済指標として正確に反映され、捕捉されているのかどうかは分からない。コンビニ業界は未だに発展途上の有望な成長産業として喧伝されているようである。
百貨店などは今更、言うに及ばずであるが、元気が良いのはレストラン階と地下の食品売り場だけである。メインの紳士服や婦人服のフロアは閑古鳥が鳴いていることが多い。バーゲンの時だけ売れているような状態である。これらが正直な生活実感としての、現在日本の景気動向である。1年や2年の小手先の政治操作でどうにかなるようなものでないことは明らかである。与党と野党の対立の垣根を越えて、日本全体が一致団結して取り組まなければならない緊急課題である。本当は選挙などしている場合ではないはずなのだ。誰に言われたのか知らないが、都合の良い時だけ民意を問うなよ。