龍のひげ’s blog

子供たちの未来のために日本を変革する

戦争と国家の興亡

いわゆる残酷動画というものに興味がある訳ではないが、イスラム国の処刑動画を見ていて感ずるところがある。それは日本人であれば当然のような気もするが、人種を問わず西洋人であっても処刑される直前や瞬間には、潔いというよりも悄然として死を受け入れている気配が画面から濃厚に見て取れるということである。どうせ殺されるのであれば罵倒や呪いの言葉の一つぐらいあってもよさそうなものだが、死の間際にあってはそんな空元気も出てこないということであろうか。まあ私が殺される立場であっても同じであろうが。同じである以上に私なら誰よりも柔順にションボリと殺されゆくような気がする。絶対的な死を目前にして人間が取るべき態度は、人種や思想に関わらず普遍的で共通していると言える。じたばたしても仕方がないし、何を言ったところで無駄なので、ただ黙って大人しく殺されるだけのことである。しかし希にではあるが例外もある。イラクフセイン元大統領が絞首刑される直前には、顔面蒼白になりながらも、「アメリカよ、地獄に堕ちろ。」とか何とか叫んでいた。死ぬ前にきちんと言うべきことを言う、或いは言えるということはさすがというか、やはり一般人とはどこか違うのである。権力者の生への執着の強さとか、敵対者への恨みの深さなどということになるのかも知れないが、権力者の特質というよりも押し並べて言えばむしろ一般大衆がそうなのであろう。私も無論その仲間ではあるが、権力とは無縁の大衆はそれがどれほど理不尽で不合理なものであっても過酷な運命を悄然として受け入れざるを得ない存在であると言える。その究極の形が死刑である。権力者ではなく庶民であっても死ぬときには一人の同じ人間なのだから、ただ黙って殺されるのではなく何か呪詛の言葉を投げつけて死ねばよいものだが悲しいかなそうはならない。庶民は庶民として死にゆくのである。これは戦争中の軍人であっても同じことである。なぜなら大抵の場合は軍人は国や権力者の命令に従って戦っているだけだから、捕虜になり敵側の支配の論理に屈服させられて、いざ死に臨んでも言うべき言葉が出てこない。恐らくは何が正義で、何が正しいのかわからないまま一つの必然のように死にゆくのみということだ。しかし私は、戦争は軍人だけではなく、罪のない多くの一般市民までもが犠牲になるゆえに絶対的な悪であるという朝日新聞毎日新聞的な定義というか正義論はやはりどこか間違っていると思う。正義などという概念はそもそも一方的な視点であり普遍的に共有される価値観では有り得ないのだ。それは戦争の大義だけではなく、戦争を否定する朝日新聞的な平和の正義も同じである。好き好んで理由もなく戦争に突き進む暴君のような権力者は悪であろうが、今の時代のイスラム国との戦いのように正義の正当性や戦争を忌避すべき平和の有り難さを訴えても何の意味もないことは明白である。そこにあるのは何が何でも戦わなければならない不可避的な現実だけである。そうならないに越したことはないけれど、一旦そういう状況に陥ってしまえば否が応でも戦わざるを得ない。また実際にそうなってくると世論や報道も変化してくることであろう。私は自信を持って断言するが、今後日本が戦争に巻き込まれて後方支援ではなく前線で戦い、多くの戦死者が出てくるような事態になれば朝日や毎日の論調は変化してくるはずである。なぜなら今の時代でも、勘違いしている人は甚だ多いが、左翼の論調とは権力を監視しているわけではないのである。監視どころか左翼も右翼もマスコミは単なる政府の広報機関に過ぎない。単に偽りの民主主義を取り繕うことで権勢をふるっているだけなのである。よって言うまでもないことだが、そこに本当の正義(そういうものが存在するのかどうか私にはわからないが)や思想があるわけがないのである。誰だって、どこの国であれ戦争は避けたい。アメリカだってイスラム国を相手にベトナム戦争のような泥沼の地上戦に突き進みたくはないと考えている。だからイラクの軍隊に金と武器を供与して背後からけしかけて指揮しているが、今の状況では限界がある。最悪の場合には将来的にイスラム国を国際的に正式な国家として承認しなければならない事態になる可能性もあると思う。幸いに日本は地理的にはイラクやシリアの地域とは距離があるので侵略される危険性はないが、日米安保の本質を考える時にアメリカのイラクに対する今の姿勢と共通する部分がないと言い切れるであろうか。言い切れないはずである。いかに楽観的に見積もってもそのようなことは実際にその状況になってみなければわからないことなのである。戦争放棄の思想はよいが、それと同時に自国は基本的には自国のみで守れる戦闘能力は必要である。日本の自衛隊(防衛)を強化すると同時に、外交は外交で平和を追求してゆけばよいのである。どこの国でもやっていることではないか。
話は逸れたが私はイスラム国の台頭や拡大にはフセイン元大統領の怨霊が宿っているような気がしてならない。すなわち、やはり元をただせばアメリカが原因なのである。そしてそのアメリカの弱体化が世界的な争乱を招きつつある。