龍のひげ’s blog

子供たちの未来のために日本を変革する

アトピー闘病記 7

水銀の恐ろしさについては、『口の中に潜む恐怖-アマルガム水銀中毒からの生還』(ダニー・スタインバーグ著 ダイナミックセラーズ出版)に詳しく紹介されている。歯の充填物であるアマルガムは50%の水銀とその他の素材で構成されている。口の中でアマルガムは唾液によって腐食し、水銀蒸気になって放射され、肺に吸入され、血液の中に入って全身を巡っていく。食べ物をかむと水銀粒子になって、消化管の中に入り、体内に吸収される。水銀を吸収した結果は水銀中毒であり、腰痛や関節痛、皮膚病などの身体的な症状の他に、注意障害やうつ病、幻覚などの身体的な症状をも引き起こす。水銀が脳に達すれば、狂気にも至る。英語にはmad as a hatter(帽子職人のように気が狂っている)という表現があるが、18世紀のイギリスでは帽子職人は、フェルト製法といって毛皮をやわらかくするために、水銀を熱した蒸気を使っていて、そのために水銀蒸気を吸っていた帽子職人が神経をおかされて狂人になったことに由来する。1865年に出版されたルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』には、狂った帽子職人が登場する。水銀は殺人の材料にもなり得る。シェークスピアの『ハムレット』では、ハムレットのお父さんが、耳に水銀を流し込まれて殺害される。日本では水銀の含有は不明確ではあるものの、遊女の「花魁(おいらん)」がおしろいに使われていた重金属のために苦しんだという悲話もある。また言うまでもなく日本では、水俣病の悲惨な被害があった。
これら水銀の恐ろしさは決して過去の話しではないのである。同書の内容を離れて見ても、2013年の10月に、世界規模で水銀の使用や輸出入を規制する「水俣条約」が熊本市で開催中の外交会議で採択された。日本では、回収された水銀の大半は輸出されており、環境省は水銀を廃棄物として指定するなどの法整備に着手し、同条約の早期批准を目指すとのことである。同会議には約140カ国の首相や閣僚級を含む約1000人が出席し、会議を主催する国連環境計画(UNEP)のシュタイナー事務局長は、水俣病の歴史に触れながら「水銀の影響を知りながら使い続けた長い旅を終わらせる行動をとるときが来た」と各国に早期批准を呼びかけた。(毎日新聞 2013年10月10日)
現在の世界においても数千万人が水銀の被害に遭っているとのことである。金の採掘に水銀が使われている地域での被害が多い。金の鉱石に水銀を加えると、水銀は金を吸収して「金アマルガム」という合金になる。この合金を燃やすと、水銀だけが蒸発して金が残る。金を抽出する安くて簡単な方法として世界の小さな金の採掘現場で使われている。このような採掘に関わる人々は、水銀の蒸気にさらされるなどして健康を損なっている。しかも、採掘の現場では子どもたちが動員されている現実もある。マリとタンザニアの鉱山では、子どもたちが金鉱石と水銀を素手でかき混ぜ、水銀の蒸気を直接吸い込んでいるのが何度も目撃されている。(THE PAGE 2013年10月8日配信)
このような記事を読むと何とも居たたまれない気分に陥る。水銀の怖さ、おぞましさは水銀中毒になった人間でなければわからないと思う。子どもが金の採掘現場で水銀の蒸気を吸い込んでいるなど、こんな非人道的な話はないし、決して許せないとは思う。しかし先進国であるはずの日本の医療現場における水銀による健康被害の認識は決して高くないし無知ですらある。私がキレーション療法で毛髪による水銀含有検査を行い、基準値の3倍もの水銀が検出されたことからアマルガムを除去するに至った経緯は既に述べた。しかし当時(今年の1月ごろ)、私は昨年までかかっていたH皮膚科の病院が何も考えずにステロイドの外用薬を出すばかりで全く信用できなくなり、脱ステに踏み切るに及んでそのリバウンドで大変な苦しみを被ることとなる状況の中で、何とか健康回復への活路を見出そうとキレーションのDクリニックだけでなく、新たな皮膚科の病院も何件も探し歩くこととなったのである。しかし結果的にはどの皮膚科の病院も安易にステロイドの外用薬に依存する治療方法には変わりなく、ましてや脱ステ後にどのように皮膚の状態を改善させていけばよいかかという見識や治療方針など皆無なのである。これは私と同じような経験をした人間であればお分かりであろうが、皮膚科とは単に薬を出すだけのところで最終的に患者が治るかどうかは、本音のところではほとんど無頓着である。医者の立場で言えば、治るかどうかはあんたの身体(皮膚)に聞いてくれ、というようなものである。その姿勢は無責任であるだけでなく薬の薬害によって余計に状態が悪くこじれていくことになるのだから、金儲け主義という以上に犯罪的である。
私はその時点ではそこまでの認識を持ち得ていなかったので、今年の1月にはS皮膚科とFアレルギー科の二つの病院で診てもらいに行っていた。そこでキレーション療法による検査で水銀中毒が判明したことを当然、話した。歯の詰め物(金属)を取って全部セラミックスに変えようと考えていることも一応、相談してみた。ところがどちらの病院の医者(院長)も止めておいた方が良い、と言うのである。なぜかと言うと、そもそも皮膚科の医者は(或いは何科であっても)、いわゆる民間療法というものは押し並べて非科学的で信用ならないものと、口に出しては言わないものの、見下しているような感じなのである。水銀中毒の結果についても血液検査の結果と同じように数値としてはっきりと現れているのに、どうも軽く考えているようであり、S皮膚科の医者などは歯の詰め物が原因で水銀中毒になるなら、その辺にいる人のみんなが水銀中毒になっているはずだと言った。またその医者の知るところでは、歯の金属の詰め物を全部、数十万円もかけてセラミックスに変えたけれどもアトピーは一向に改善しなかった例があるので、金の無駄遣いになるだけの可能性が高いから勧められないと言った。Fアレルギー科の医者も同じような反応であり、水銀の含有など大して気にする必要がないようなことを言う。「水銀、水銀」とばかり考えているとそのストレスで余計にアトピーが悪化するとか、そのようなアドバイスであった。数十万円も出してセラミックスに変えても、それならマグロはどうなるのかと。要するに日本は水産国家でマグロなどもよく食べるから、そこにも水銀は含まれているから同じであるという理屈である。このマグロの話についてはその後、歯科医で話題にして歯医者と共に大笑いしたものだ。確かに日本人は他の国の国民に比べればマグロなどの大型魚を食べる機会が多いからその経路で水銀を摂取する可能性はあるが、1年365日毎日マグロを食べているならともかく、普通はたまに食べる程度である。それと水銀が50%の割合で構成されているアマルガムが口の中で腐食して、1日24時間ずっと放出され続けていることから体内の血液中に取り込まれる水銀の量とは全然比べ物にならないレベルであるはずだ。一般的な皮膚科の医者は対症療法ではなく、きちんと原因を特定して根本治療する新しい治療法に対して敵愾心というか、自分たちが駆逐される恐れを抱いているようにも感じられる。Fアレルギー科の医者などうっかりボロを出して私に言っていたことには、その医者の奥さんはそういう理由から歯の詰め物を全部セラミックスに変えているのである。自分の嫁さんがやっていることは黙認しているのに、患者に対しては金がもったいないから止めとけとは、どういう了見なのだろうか。まあ本当に良心的にアドバイスしてくれていたと思えたのであれば、私もこういうことは言わないのだけれど。S皮膚科もFアレルギー科も、キレーションなどという治療法は胡散臭いので(S皮膚科の医者はキレーションを知りさえしなかった。Fアレルギー科は知っていた。)、歯医者とグルになって患者(私)を騙そうとしているのだと、もちろんそうははっきりとは言わないけれど、そういうニュアンスでおためごかしのようにアドバイスするから私としても鼻白むのである。まあ確かに世の中にはそのような詐偽の手口がたくさん存在するであろう。ところが客観的に見てもキレーションをやっているDクリニックの方が確かに保険適用が効かないから金はかかるが、はっきり言ってその辺の皮膚科の医者の言うことよりも信用できるのである。私に言わせれば、胡散臭いのはどちらだということだ。また私がアマルガムを除去してもらった歯科医は確かにDクリニックと提携関係にあり、Dクリニックから紹介してもらったものだが、そこで掛かった費用は前回にも述べた通り、当初私は数十万円も覚悟していたものが実際には2500円ほどで済んだのである。騙しどころか非常に良心的である。その上それで、確かに一つのアマルガムを除去しただけで、アトピーの症状は残ってはいるものの、私の身体は憑き物が落ちたように楽になったことは事実なのである。それで私はその後、その事実をわざわざFアレルギー科とS皮膚科に治療を兼ねて報告しに行ったのである。冒頭に述べた『口の中に潜む恐怖-アマルガム水銀中毒からの生還』の本をわざわざ新しく贈呈用に買って、携えて持っていった。地域住民の健康のためには医者にはもっとしっかりと勉強してもらわないと困るからである。Fアレルギー科の医者は私の報告を聞くと「それはラッキーやったな」と言った。私が本を贈呈しようとするとその医者は嬉しそうに、「ああ、その本は読んでるで。」と言って、待合室にたくさん並べてある蔵書の中のどの辺にあるかまで嬉々として私に教えるのであった。私にすれば、何だ、それはという感じである。知識があるのであればもっと患者のために役立ててくれないと困るというものである。S皮膚科の医者は私の報告を聞くと言い訳のように「僕は、何十万円も出して全部セラミックスに変えても一向にアトピーが良くならなかったという話しを聞いていたから。」と言った。私が本を読んでくださいと言って手渡すといかにも困惑した顔で「忙しくて、読んでいる暇がない。」と言う。それで私が口には出さないまでも「自分の仕事のことだろう。何が忙しいだ。」という顔付きで静かに見据えてやると、諦めたように「わかりました。この本は頂いておきます。」と言ったのであるが、恐らくその後、その医者は読んではいないであろう。無能の人間には無能の恒常性を維持せんとするホメオスタシスが働いているからだ。自分の利益にならないことは知らない方が良いということである。その後私は、Fアレルギー科にもS皮膚科にも一度も行っていない。