龍のひげ’s blog

子供たちの未来のために日本を変革する

非現実的な消費複数税制

軽減税率などと言っても、要するに複数税制である。読売新聞は新聞に適用させるためだけに軽減税率を要求しているが、日本の店舗における販売売り場で、今、いきなり複数税制に変更することが現実的なのかどうかよく考える必要がある。たとえば都市型ライフスタイルに深く浸透しているコンビニで買い物をする場合を考えてみると、1回の僅か千円程度の買い物であっても食料品が8%でそれ以外の日用品が10%の税率だとすれば、二つの区分で集計して合算しなければならない。今のPOS端末とレジでは到底、対応不可能であろう。ということは日本の隅々にまで普及しているセブンイレブンとかファミリーマート、ローソンなどの販売管理システムを全部入れ替えなければならないということである。コンビニだけの問題ではないが、コンビニだけを考えてもこれがいかに膨大な社会コストを要するものであるかは誰が考えても分かることである。設備投資の押し上げ効果で景気がよくなることを期待する人もいるかも知れないが、それらのコストはいずれは商品価格に転化せざるを得ないものであろうし、最終的な消費動向で見ればより一層の冷え込みに向かうものと見られる。普段の生活のなかで、街の風景の変化として気づいている人も多いであろうが、今やコンビニ店舗ですら、それも長年営業してきた店が、突然、廃業していることがよく見かけられるようになってきている。コンビニ本部はトータルの出店数が売上になるので、店舗数を維持することで売上を維持したり伸ばしたりもしているようだが、個別の店単位で見れば、今や非常に厳しい経営環境になってきているように思われるものである。別に私はコンビニ経営者でも関係者でもないのでどうでもよいことだが、このような社会状況で複数税制を導入することが妥当な判断と言えるであろうか。
またそもそも一体何のために、何の理由で、何のメリットを期待して複数税制を社会が選択しなければならないのか。資本主義社会とは一部の強者の利益のために、その他の全てが矛盾した不条理や不利益を背負い込まなければならないことが多く見られるものであるが、消費税増税における軽減税率の採用は、まさにその典型的なパターンであると看做され、市民感情とすれば到底許されないものである。社会的弱者への救済などと言いながら、実は新聞社という日本の資本主義食物連鎖の頂点に位置するがごとき大組織が本来、担うべき負担を忌避して免除されようと政治に圧力をかけているだけのことではないのか。政治は本筋、本道を見失ってはならないものである。弱者救済のための措置であるならば、軽減税率などという複雑で社会的コストの掛かる複数税制ではなく、マイナンバーカードと連動させた還付でもなく、単に一定額の政府発行の食品券を配布するとか、それに相当する金を各世帯に送金するかで充分ではないか。それが尤も低コストであり、本来の目的にも適ったやり方であると言える。我々一般市民がよく肝に命じなければならないことは、権力とか資本主義の強者がなぜ強者の立場にあるのかと言えば、社会システムを自らに都合よく構築させ、負担や不利益はずべて弱者に押し付けるような法律や制度を提言し、また認めさせる力を持っているからなのである。安保法制の反対デモに参加しているから民主主義に参加している訳ではないのだ。こういう世の中の欺瞞や搾取、誘導の企てを市民の立場で瞬時に見抜くことができるかどうかということが、民主主義の出発点なのである。