龍のひげ’s blog

子供たちの未来のために日本を変革する

屋根裏の鼠の如き我が思念 2/2

「それで何で女性用トイレにはいったんや。」
「いや、考えごとしてて間違えて入ってしまったんです。わざとじゃ、ありません。」
「そんなことないやろ。きちんと男性用と女性用の標識が出とるんやから、考えごとしているぐらいで、間違う訳ないやないか。」
「考えごとしてたんで見えてなかったんです。」
「アホ言うなよ。あんなにはっきり出てて、見えんかったってそんな言い訳警察では通用せえへんで。」
「はあ、でも・・・・・・・・・。」
「考えごとて何や。何を考えてたんや。」
「日本のことです。」
「なんや、それ。日本の何を考えることがあるんや。」
「全ての日本人が戦後の頸木から解放されて、真に日本人としての誇りと自覚を取り戻し、自信を持って自らの人生を歩めるようになるためにはどうすればよいのか。そして日本が平和を追求しながら、国際社会の中で内政干渉や圧力を受けることなく、本物の独立国家として世界に影響力と地位を高めていくためにはどうすればいのかということです。」
「そ、そんなことを考えてたんか。」
「そうです。」
「そういうことを考えてて、うっかり女性トイレに入ってしまったんか。」
「そうです。」
「・・・・・それは政治の考えることやろ。自民党とか安倍総理がいろいろやっとるやないか。」
「いや自民党も何党も何もしていません。やろうとしている振りをしているだけで、実際には何も改めるつもりはありません。だからそういう日本の政治的な均衡を打破するためには何が必要なのかということを考えていたのです。」
「まあ、それはあんた一人の意見や。それはそれでええやろ。日本は憲法で思想、信条の自由が認められてる訳やからな。そやけどな、あんたが何を考えていようが、女性トイレに現に立ち入ったという動かし難い事実があるんやで。それは否定せえへんな。」
「まあ、そうですね。否定しません。」
「あんたはそこで一人の女性と遭遇して、その人に不快感と不安感を与えたんや。そやから駅員に通報されて、拘束されることになっとるんやろ。」
「その経緯は否定しません。でもその女性の不快感や不安感は誤解によるものですから、きちんと説明させてもらえれば、」
「誤解かどうかはこっちが判断することや。あのな、人間、誰でも間違いはある。それはしゃあないことや。だからあんたが女性用トイレの入り口から1、2歩入ったところであっと気付いて引き返していればセーフやったかもしれん。しかしあんたの場合は奥まで侵入して、後から入ってきた女性に見つかるまでに数秒の時間があった訳やろ。これはアウトやな。」
「いやアウトと言われても、私が立ち入った時点では誰もいなかったから、男性用だと思い込んでいた私は、周りを見回して小便用の便器がないことにおかしいなと気付くまでに数秒の時間を要したということです。」
「最初の質問に戻るで。それで何が目的や。」
「はあ?」
「何が目的で、女性用トイレに入ったんやと聞いとるねん。」
「目的も何も男性用だと間違っていただけで、故意にやったわけではないから、答えられません。」
「黙秘権の行使か。あのな、警察は忙しいねんで。ええ加減にせえよ。男が女性トイレに入っているところを見つかって通報されとるわけや。普通、こういう場合の目的は一つしかないんや。わかるやろ。覗きや。覗きが目的で入ったんやろ。被害者の女性も覗き目的としか考えられへんて言うとるんや。はよ、白状せえや。」
「ちょっと待ってくださいよ。何でそんな急に飛躍するんですか。それは絶対に違います。私にそういう性癖はありません。」
「痴漢とかな迷惑防止条例違反で捕まった人間は、皆、最初はそういうことを言うもんや。まあ、あんたの場合は初犯のようやから、覗きの未遂を認めたら、今回は書類上の注意だけにしといてあげるから。罰金もなしや。一応、記録には残るけど、こんなもん誰にもわからんことや。そやけど認めへんのやったら起訴になるで。刑事裁判するつもりか。一生、棒に振ることになるで。さっさと認めた方が身のためやで。」
「脅迫めいたことを言わないでくださいよ。そもそも被害者の女性って、現実には何の被害も受けていないじゃないですか。実際には覗かれた訳でもないし、たまたまトイレで私と鉢合わせになっただけのことでしょう。」
「被害がない?。ようそんなこと言えるな。不安を与えとるやないか。さっきも駅長室で話しを聞いていた時に、あの女性、ショックで身体、震えてたで。」
「・・・・・、それは警察がきちんと私の言っていることを説明して、誤解を解いてくれないからでしょう。私を覗き魔か強姦魔のような前提でその女性に接していたからでしょう。そんな一方的な決め付けで私は処罰されなければならないのですか。それじゃあ、あまりに不条理だ。まるでカフカの小説の『審判』じゃないですか。」
「文学的なこと言うて、はぐらかそうとしたってそうはいかんで。警察はそんなに甘い所と違うんやからな。何や警察のせいにするつもりか。・・・・・あんた警察官のことを知能指数が低いと思うて馬鹿にしとるんとちゃうか。日本人の誇り、日本の独立、一体何様のつもりや。調子に乗っとたらあかんで、この右翼かぶれが。」
「そこまで言うんやったら言わしてもらいますけどね。」
「何や言うてみい。」
「あなたたち警察のやっていることは、迷惑防止条例違反か何か知らないが、こんな罪とも言えないような勘違い程度のことで一般の市民に対して、居丈高で高圧的な取り調べをして、罪悪感を押し付けて、それはあなたたちにその自覚があるかどうかはともかく、間接的には大衆の政治的な批判能力を刈り取って無化しようとしている、いや、させられてるということなんですよ。マスコミのしてることも同じですけどね。あなたたちは社会正義に準じているわけではない。単なる権力の犬だ。」
「何やとゴラァ。日本の法治主義を否定して、警察官を侮辱するのか。公務員侮辱罪で逮捕するぞ。警察は忙しいと言うとるやろが、お前の政治批判の能書なんかどうでもええんじゃ。生意気なことばかり謳うてたら裁判所の令状取ってきて家の中、無茶苦茶に調べるぞ。早う、覗きを認めんかいゴラァ。パーン(灰皿を取調室の壁に投げつける音)。」
と、こんな感じで20日間拘留されて、結局、覗き目的の女性トイレ侵入容疑を認めさせられることになるのであろうか。いや、20日どころか、こういうヤクザまがいの取り調べを受ければ、私のように本質的にお上品な人間ならひとたまりもない可能性もある。恐ろしいことである。皆さんもくれぐれも気をつけてください。男性トイレと女性トイレを間違えるようなことでなくても、今の日本にはそれに似たような日常の落とし穴は無数にあるのだから。惰性化した日常に決して油断しないと言うことが、身を守るための鉄則である。ちょっとしたことでいざ被疑者のような立場に一旦、追いやられてしまえば、誰も助けてはくれないのである。パンティーちゃんこと高木復興大臣のように身内に警察に圧力をかけてくれる有力者がいるのであれば話しは別であるが。(私の取り調べの話しはあくまでも「虚構」のフィクションで、パンティーちゃんの疑惑は「真正」のようなので同一次元で考えられては困りますが。)そうなる事態の可能性を最小化させる最良の方法は、日常生活の中の想像力にしかないのだと思われる。なぜなら人生とはその人が想像し得ないことを不測に具現化させようとする力が常に働く場であるからだ。最後にこれだけは言わせていただきたい。以後は充分、気をつけてそのようなことは絶対にないように心掛けているが、私は女性トイレに3回も4回も間違えて入ってしまうほどに、四六時中、寝ても覚めても、日本の政治のインチキや虚構性に憤慨し、憂いているのである。なぜかは自分でもよくわからないが、私はそういう精神状態から離れられないのだ。私がブログの記事に書いているようなことは(今回の記事はいつもと少し毛色が異なる内容であるが)、その時になってぱっと思いついたことを述べているのではなくて、多少の誇張を許していただければ、一日中、それも一年365日間ずっと屋根裏を鼠が駆けずり回るように、私の頭に取りついて離れない言葉であり、切実な思いなのだ。自分にとっては何の得にもならないし、何の社会的な評価にもならないのにである。自分を美化するようなことはあまり言いたくないが、そのような純粋な思いで(純粋であることが必ずしも良いとは言わないが)日本のことを考えているような政治家が一人でもいるのかということだ。そういうことである。わかったか。