龍のひげ’s blog

子供たちの未来のために日本を変革する

時代錯誤の経済理論

日銀の金融政策について見れば、どうも今の黒田氏より前任の白川氏の考え方の方が正しかったことが証明されているようだ。日銀は、この3年の資金投入で400兆円もの資金量となっているが、物価はまったく上昇していない。経済の教科書通りにマネーサプライを増やしても、物価を上げることは出来ないのである。日銀の失敗は、生きた経済を見ていないということに尽きるのであろう。というよりも、黒田氏の政策とか考え方という以前に、黒田氏はそもそも自民党の傀儡というのか家来のような立場で日銀の総裁に就任した人物であって、経済大国である一国の中央銀行総裁が、政治と一蓮托生の関係性にあるということ自体が問題が大きいと言えるのではなかろうか。時の政権と経済情勢についての見方や考え方が異なっていても、日銀は一定の独立性が保たれるべきであり、政治の命ずるままに動いている今の姿勢は健全性を喪失しているように見える。白川氏は結局、自民党の脱デフレ政策によって解任されてしまったが、白川氏の方が黒田氏などよりも健全であったし、正しくもあったのである。大体、あの黒田という人はニュースなどで見ていても、何というのか嫌な感じを受けると言うか、正直に言ってあまり賢そうには見えないのである。とは言っても私などよりははるかに賢いのであろうが、顔付きや話し方などからは気品とか精神性のようなものが感じられない。私の言う嫌な感じとはそういうところに原因があるのではないかとも思われるのであるが、まあ所詮、家来には気品もくそもないということであろうか。ともかくも自民党と日銀の失敗は、何十年も昔の経済理論が今の時代には当てはまらないことをきちんと理解できていなかったことではなかろうか。現代の日本においては、社会が一定の成熟にあって生活用品や社会資本などが既に行き渡っている。パソコンなどの生活様式を一変させるような画期的な技術革新というものも、もうしばらくの間は生み出されてきそうな気配もない。そういう成熟、安定した社会状況の中で、つまり金利が0で、成長性がきわめて低い環境下において、全ての人間が資本主義経済における同等の利益を得られているかというとそういうことではなくて、一部の大資本の成長維持のために多数の人間の賃金が抑制されたり、下請け零細業者の売り上げが年々減少する一方であったりすることから、中間層が完全に没落してしまって、日本においてもアメリカ同様にごく一部の富裕層とそれ以外の下層階級に二極化されてしまっているのである。そのような社会環境の中で、教科書通りにマネーサプライを増大させてもそのカネは、どこかに偏在、滞留するのみで物価を押し上げる力とはならないのである。これは我々の日常生活の実感に照らして考えても、常識的にわかることである。当たり前のことではあるが、低所得者層の人間にあっても日々、食べて行かないと生きていけないのだから、日本全体で見れば低所得者層の支出金額は決して小さくはない。年収が200万円とか300万円の人の暮らしも毎日、スーパーに行って食材や様々な日用品を購入しているのである。そしてその消費動向が日本経済の実相であるのだ。当然、贅沢はできないから少しでも安くてコストパフォーマンスの良い物を選ぼうとすることになる。またスーパーなどの量販店やモノを製造しているサプライヤーは、そういう圧倒的多数の低所得者層を対象に売り上げを上げて、利益を出していかなければならないのであるから、消費者の購買動向を無視して価格を引き上げることは出来ないのである。よって物価は上がらないし、デフレは継続することとなる。それではここにおいてマネーサプライの増大が何の意味があるのかと言えば、何の意味もないのである。また前回にも述べた通り、デフレによって低所得者層の生活が何とか成り立っているのであるから、その生活環境を壊してまで無理やりにインフレ誘導することに何の意味があるのかということである。デフレが悪なのか。そうではなくてデフレを悪だと決めつけている政治を自民党が、日銀を家来にしてまで邁進しているだけのことではないのか。デフレだから不景気だという考え方も、恐らくは何十年も前の経済理論に基づいているものである。確かにデフレが従業員の低賃金や下請け業者の赤字などの犠牲の上に成り立っている側面はあるが、それはあくまでもデフレの一側面であって、デフレ経済であってもモノやカネの流通が活性化していて、企業の利益や従業員の給与や家計のやり繰りが、その時代に応じてバランスがとれていれば問題が無いはずなのである。言い換えれば現在にあっては、デフレというものは環境問題も含めて時代の要請であると言えるものであるから、政治はデフレ脱却を目指すよりも、デフレ経済の枠組みのなかでの最適化を追求すべきではないのか。私が見るところにおいては、神の見えざる手ではないが、デフレは今の時代における健全性の現れである。その健全性を全面的に敵視して、諸悪の根源のように決めつけてしまっているから、莫大な資金を投入して、カネ余りのジャブジャブの状態にして尚、物価がまったく上がらないという事態を招いているのではないのか。マネーサプライと物価の相関関係については、円だけでなくドルにおいても同様である。2008年のリーマンショック以降、ドルのマネーサプライは飛躍的に急増しているが、今のアメリカはインフレにはなっていない。日本だけでなく世界全体が、実体経済と情報空間における通貨量が分離してしまっているのである。よって通貨政策によって実体(生活)経済に影響を及ぼすことが難しくなっているように考えられる。だが偏在、滞留している莫大なカネが、イギリスのEU離脱のようなイベントが発生した時には、実体経済を破壊するほどに為替相場を動かすことになるのであるから、リスク要因だけは確実に大きくなっている。