昨日、一昨日の動きとしてマスコミが、詩織さんのレイプもみ消し疑惑について、これまでの姿勢とは一転して報道に転じたが、これがどういう思惑によるものかと言えば簡単なことで、この辺で一回ぐらいは報道しておかないと、なぜ報道しないのかということについての国民への説明が成り立たないと言うことと、そういうマスコミの報道姿勢に対して国民の怒りが臨界点に達する危険性を推し量ったものであり、まあ言ってみれば、放射能漏れした原子炉にあわてて水を注水するのと同じであって、報道の責任や役割というよりは、単なる「組織防衛」に過ぎないものである。マスコミが報道しないで無視することも組織防衛であれば、あわてて報道に転ずることも組織防衛ということであれば、結局、公共性や社会的責任などの美名とは無関係に、そこには情報を利用したマスコミと政治の共同作業による社会操作しかないとみられることは当然のことであるが、最初からマスコミが自分たちの業界にとって都合が悪い内容の事件や不祥事についても、包み隠さずに公表するような企業内部の倫理観や自己規制などを期待することは土台、無理な話しであって、我々一般市民が政治やマスコミの強固な洗脳から離脱して、本物の民主主義を作っていくという強い意志を持つ以外に道はないものである。ニュース番組だけでなく、バラエティー番組もスポーツも、少なくとも「記者クラブ」に加盟しているようなマスコミ企業が垂れ流す情報は、基本的には全て政治と一体化とまでは言えないかも知れないが、密に通底しているものである。その程度ぐらいのことがわかる知性なり洞察力がないのであれば、はっきり言って、今の日本においては精神的に自立した市民というよりも「奴隷」と同じであるが、現在の日本人は一般的な大衆だけでなく、知識人までもが、いや知識人の方がより一層に奴隷化しているように考えられるものである。奴隷から人間に脱皮することが、いかに大変なことか、今の日本を見ていると本当によくわかるような気がしてならない。ただ一つ確かなことは、実は奴隷で在り続けることの方が、一個の自立した精神を持った人間になることよりも「幸福」なのである。そういう国で、幸福を科学するというような新興宗教が、少なくない数の人間に支持、信仰されている潮流は、私の目には何かしら時空を超越したような皮肉か冗談を見ているような気がしてならないものである。幸福とは霊的なものであるというより、社会的な意識の在り様だと思えるのであるが。
さて、そんなことよりも前回に続いてお約束した通り、小林美佳さんのノンフィクション『性犯罪被害にあうということ』の感想を述べさせていただく。まず繰り返しになるが、レイプなどの犯罪に車が利用されるケースが多く、女性や子供が車に引き込まれる危険性への警戒心が、社会的に警告、喚起される必要性があるということを再度、強調したい。美佳さんは車に乗っている男から道を聞かれて、運転席に近づいたところを、もう一人いた男が美佳さんが自転車のハンドルに下げていたカバンを取って、美佳さんの背後に立っていたのである。美佳さんは、咄嗟に新手のひったくりだと思って、その男を追いかけたのであるが、男はカバンを持ったまま車の後部座席に乗り込んでしまい、窓際から仕事の重要な書類が入ったカバンを懸命に取り戻そうとしたところを車の中に引きずり込まれてしまってレイプされることとなったのである。瞬間的にひったくりだと思って体が無意識に取り返そうと反応したところを車の中に引きずり込まれてしまって、レイプされてしまったのだ。この錯誤を利用した手口は犯罪者側からすれば非常に巧妙なものであり、社会的な防犯意識から考えればその認識は重大であると考えられる。もし美佳さんが、日ごろから車の中に引き込まれる性被害の警戒感を持っていれば、どんなに重要な仕事の書類が入っているカバンを取られていても、男が車に乗り込んだ瞬間に取り返そうなどとは考えずに、車から離れてナンバーを見るなり、車の色や車種を判別するなりの努力をして、走って逃げるか大声を上げて助けを呼ぶかの選択肢が取れたかも知れない。もちろんそうしたところでやはり男二人に捕まえられて、車に押し込まれていた可能性はあるが、助かっていた可能性も少なからずあったであろうと想像される。しかしそのような心構え、つまり車内に引きずり込まれる警戒心がなければ、瞬時にそのような判断と行動がとれる訳がないものである。女性なら誰だって美佳さんのような状況に遭遇すれば、カバンを取り戻そうとするであろう。よっていかに普段の注意喚起と心構えが大切かということである。ちょっとした心構えがあるかどうかで、人生が大きく左右されてしまうのであるから。これは美佳さんのケースだけではなく、２０１５年の８月に京阪寝屋川市駅前付近を深夜に徘徊していた中学生の星野くんと平田さんは、監視カメラも設置されているような場所柄であるにも関わらず、一瞬の隙をつくようにして、車内に引き込まれるか、誘われるかして乗せられ、山田浩二被告に無残にも殺害されてしまった。山田被告はどうも女の子の平田さんよりも、男の子の星野くんの方に興味があったようであるが、ともかく性犯罪と車はセットになっていると言ってもよいほどであり、女性だけでなく子供が被害にあう危険性を考慮するならば、もっと社会的な対策が施されるべきであると私は思う。そしてそういう時にこそ、政治と警察とマスコミの協力関係が生かされるべきであるはずだが、今の時代の訳のわからない痴漢撲滅キャンペーンや「ＴＢＳだから逮捕できない」もみ消し疑惑などを見るにつけ、この国はやはり弱い立場の人間が蹂躙されたり殺害されるようなしわ寄せのシステムになっているのだと思えてならないのである。次回は美佳さんが受けた捜査について思う所を述べさせていただく。
