龍のひげ’s blog

子供たちの未来のために日本を変革する

詩人の仕事

水の都と呼ばれる大阪は
その昔、江戸時代の地図などを見ると
本当に縦横を河に囲まれて
水の流れと共に人々の暮らしが
営まれていたことがよくわかるのだ。
朝、目が覚めれば
手の届くような距離で幾隻もの舟が
ゆったり、優雅に食糧や材木を運搬している
光景が目に浮かぶようだ。
当時の河の水は今とは違って
子供らの心のように
さぞかし澄んでいたことであろう。
四方をとり囲む清らかな水流は
人や物を運ぶだけではなく
罪人の罪や穢れを洗い浄め
過去の戦の怨念を忘れさせ
市井の民の平凡な物語を前へ、明日へと押し流す
確かな役割をも果たしていたことであろう。
人生は生命の流動だ。
今の時代には、我々の身の回りには
一体、何が流れているのであろうか。
江戸の昔に比べれば
人も物も情報も、何倍にも膨れ上がってはいるが、
生命の豊かさを育み、魂を浄化するような本質的な何かが
流れているであろうか。
平成の世の、大阪の運河は
何一つ流そうとも、育もうともせずに
青黒く濁り、澱んでいるばかりだ。
だから、これからの時代は
我々庶民が社会を洗い清める
力強い一つの流れそのものに
ならなければならないのだ。
とりあえず差し当っては
大資本や権力に毒されていない無垢な言葉を
日常の岸辺からそっと流すことが
詩人の仕事である。