龍のひげ’s blog

子供たちの未来のために日本を変革する

蝉の存在理由

目覚めれば、蝉の声。
我が青春の麗しき恋の夢を見ていたのに、
蝉に起こされる。
生命の雑音。
街中の不協和音。
じりじりと日中へと向けて
気温を上げてゆくかのような蝉の鳴き声。
ああ、早く死ねばよいのに。
お前らが、この夏の地上から
一匹たりともいなくなれば
そして路上のアスファルトから
全ての死骸が掃き清められる頃
爽やかな秋の風が吹き始めるであろう。
蝉たちよ。何をそんなに忙しげに鳴くことがあるのか。
死が迫っていることを知っているからなのか。
一体、鳴くことに何の理由があるのだ。
求愛でもしているのか。
大きな声で鳴けるほどに優越な蝉の遺伝子。
でも所詮は、喧しいだけの
無価値で、無意味な儚い生命。
そして人間たちもまた蝉のように鳴いている。
目には見えない打算と計略の羽を打ち合わせ、
金や地位の大木にしがみ付き
自らの大義と使命を叫びつつ
無価値な生命の終焉を待っている。
ああ、早く秋がくれば
私は、蝉の雑音に妨害されることなく
静かに美しい恋の夢の続きを
見ることができるであろう。