龍のひげ’s blog

子供たちの未来のために日本を変革する

タレント政治の弊害

我々の身の回りの情報や生活上のことは、ちょっとよく考えれば誰でも分かるようなことに満ち溢れている。ところがほとんどの人は、忙しいとか関心がないという理由もあるのであろうが、考えないで「流される」。だから「騙される」のである。騙されるとは、習慣や通念、権威に流されることであって本質的には善悪の問題ではないと言えよう。特殊詐欺とはそのような盲点をついた犯罪である。
たとえば前回に述べたことを補足すれば、反社のチェックについてであるが、ホテルが宴会などの場所貸しに反社であるかどうかのチェックをしようとするとどういうことになるであろうか。宴会ということの性質上、ホテル側は幹事の身分照会や本人確認をするだけでは済まされないはずである。当日、参加予定の全ての者の名簿を提出させてその一人一人に対して反社が含まれていないかどうかのチェックを行わなければならない。はたしてそのような手間の掛かることが本当に実施されていると思われるであろうか。常識的に考えれば不可能である。また警察もまたそこまでの指導なり要請をホテルにできない。なぜならそのような手間は結局は全て宿泊費や場所代などの料金に反映されざるを得ないからだ。通常料金との差額分を誰が負担するのかという問題が生じる。またそのような指導(があるとして)を正直に受け入れたホテルの競争力低下、売り上げ減少などの責任は誰が引き受けるのか。これが先日、開催されたG20の大阪サミットなどにおいては、要人警護のために一般客の開催期間中の宿泊、立ち入りは恐らくは全て排除されたということだったのであろう。要するにテロであれ反社であれ、ホテルが利用客の身分照会など一々やっていられないということだ。個別の犯罪捜査であれば別であろうが、反社を排除するためにそこまでのチェック体制は常識的に考えて有り得ないことだ。しかし金融機関の口座開設や自動車の販売、レンタルなどは免許証の提示や住民票の提出などの本人確認が元々必要なことであるので、反社のチェックは比較的、簡単にできることであるし、その手間が一般人への金利負担や販売価格に加算されることは有り得ないことである。また反社組織の金融機関口座や自動車の保有については警察も特段の警戒を示すであろうから、チェックが行われるのは当然のことである。私は警察関係者でもなければ、ホテル業界の人間でもマスコミとつながりがある者でもない。そのようなことは「普通に」、「常識的に」考えれば、誰でも分かるというか大体の推測はつくもののはずである。
ところがタレント政治(言うまでもなく橋下氏のことだが)は、宮迫に対して「反社会的勢力の排除チェックをやっているはずのホテルでの宴会ということになれば、大丈夫だと信じてしまっても仕方がないと思う。」などと恐らくは事実の確認もせずに平然とそのような発言をする。そうすると大多数の国民は橋下氏の発言に「流されて」何の疑問も感じることなくその通りだと信じ込んでしまうものである。これは世論形成の在り方としてかなり問題が大きいのではなかろうか。構造的には大衆が、警察や役所の人間をかたる特殊詐欺の手口に騙される心理状態と同じパターンであると言えるのではないのか。もちろん橋下氏は悪意で一般人を騙そうとしたものではなくて、タレントの仲間意識から宮迫なり当日忘年会に参加した他のタレントを庇ってやろうとした意図の発言だと推察されるものであるので、別に私は橋下氏個人を必要以上に批判したり、悪者扱いするつもりはない。私が言いたいことは、タレントの仲間意識が悪いとは言わない。それは一般的なその他大多数のタレントであればということだ。しかし橋下氏はタレントという区分に含まれているにせよ、現役の弁護士であると同時に、元大阪市長である。そのような人間の発言は一般人に対して影響力や浸透力が大きいことは当然のことである。私のように捻くれ者以外の大多数の人間は、無条件にその言葉を受け入れてしまうものである。タレントとしての軽々しい仲間意識からの大衆誘導ではなくて、擁護したいのであれば弁護士として正式に受任した上で弁護活動を展開すればよいのではないのか。そうであればどのような屁理屈であれ、誰にも批判される筋合いはないであろう。橋下氏は宮迫らの脱税の問題について危惧する発言をしていたが、それ自体が大衆のこの問題に対する理解、印象をミスリードさせる性質のもののように感じられた。法律上は「善意の第三者」といって、盗み、詐欺など不法に得られた金であってもその事実を知らずに受け取ったのであれば責任を追及されることにはならない。そういうことを念頭に置いて、宮迫らが特殊詐欺グループであることを知らなかったという前提で、脱税や修正申告について言及しているように私には感じられた。しかし果たして、仮に知らなかったとしても「脱税」の問題なのであろうか。一般人であればそうであろうが、公共のTV電波に頻繁に出て収入を得ていたような知名度の高いタレントであれば、道義的には国に納付するのではなくて、何らかの方法で被害者に返す方法を模索すべきではないのか。ともかくも人それぞれ考えはあるであろうが、私ははっきり言ってタレント政治の弊害は大きいと思う。政治に騙されるのも、詐欺に騙されるのも実質的には何の違いもないのである。それがわかるかどうかが全てであろう。参議院選挙を目前にして、選挙の結果などどうでもよいが、そういうことを言わなければならないことが情けない。