龍のひげ’s blog

子供たちの未来のために日本を変革する

親子遭難死のルート検証

やっと見つかったのか。発見されたのはよいが、6歳の子供は当然のことであるが37歳の父親にしてもあまりにも早過ぎる死であり、気の毒で可哀そうだとの言葉しか出てこない。新潟県五頭連山で行方不明であった渋谷さん親子がコクラ沢付近の斜面で遺体で折り重なっている状態で見つかった。

地図で調べて見ると、渋谷さんの行動や判断、心理状態が見えてくる。渋谷さん親子が松平山に登頂したのは間違いない。しかし渋谷さんは登山口まで車で来ていたのでその場所に戻らなければならなかったのが、何らかの理由で方向を間違えて下山してしまったのだ。それで松平山から南下して五頭山の方向に向かって歩いている時に日が暮れてしまってどこかの場所でビバークすることになったのであろう。その地点から渋谷さんは父親の秀雄さんに電話をかけて「松平山と五頭山の中間辺りにいるようだ」「民家の明かり、その向こうに町の明かりが見える」と話している。地図で見れば、渋谷さんは松平山山頂から南に2キロほど歩いた地点から西側に拡がる阿賀野市の街並みを見ていたのであろう。そして翌朝の7時20分ごろにこれから下山すると再度連絡を入れている。ここからどの方向に歩いて行くかが生死の分かれ道であったのだろう。五頭連山阿賀野市を縦断する国道と平行するように南北に連なっている。よって南に南下して行っても延々と続く山々を下りたり上がったりを繰り返すだけで麓には降りていけないのである。本来であれば渋谷さんは松平山の山頂に一旦戻ってそこから登ってきた正しいルートで登山届を記帳した登山口まで下山すべきであったのである。ところが渋谷さんは恐らくは登山の経験がほとんどなかったからであろうが、そのような発想が思いつかず、また五頭山山頂にまで行けば誰かに遭遇したであろうに、どこかの地点から登山道を外れて最短距離で西側の町まで降りて行こうとしたのであろう。これは山を平地と同じような感覚で考えてしまう登山初心者の発想によるものだと思われる。平地であれば建物などの障害物に遮られていなければ、どの方向であろうと点と点を結ぶ最短ルートで突っ切ることが出来る。ところが山の頂上と麓の登山口を結ぶルートは限られた何本かがあるだけでそのルートから外れてしまうと遭難してしまうものである。渋谷さん親子も足場の悪い急峻な斜面を下っている内に、それ以上先にも進めず後戻りも出来ないような場所に彷徨い込んでしまったのではなかろうか。たとえ眼下に阿賀野市の街並みが見えていたとしても道がなければ鳥でもなければ、山の中に閉じ込められてしまって無事に下山することはできないのである。よって登山で道に迷った時の鉄則は、絶対に登山道から離れないということであろう。方向がわからなくなっても、自分がいる場所がわからなくなっても、どこかの登山道にさえいればいずれは誰かに発見されるであろうし死ぬことにはならないのだと思われる。またパニックになって麓に向かって下山しようとするから登山道から外れるのであって、峰の方向に登山道を歩いていれば、見晴らしもよくなってきて精神的にも落ち着いてくるし、山頂に近付けば人と遭う可能性も高くなる。渋谷さんにそういう心構えがなかったことと、道に迷ってビバークした時点で自分の判断ではなく警察か誰かに救助要請までいかなくとも何らかのアドバイスなりサポートを求めなかったことが残念でならない。本当に悲しいことではあるが、渋谷さんと空君親子には天国でゆっくりと休んで、地上世界でこのような遭難事故が繰り返さないように特に小さな子供の命が犠牲にならないよう見守っていただきたいものだ。