龍のひげ’s blog

子供たちの未来のために日本を変革する

生きること、書くこと 120


それで私は腹立たしく、悩ましく、やるせない判断を迫られることとなった。生活費を減額すると、妻は

これでは生活できないと弁護士を通さず直接、私に電話してきた。確かに、その金だけでは生活できない

であろう。しかし私が前回に述べたような当時の状況からすれば、つまり夫婦間で裁判を争っていて、お

まけにマンションの鍵を付け替えられ、部屋に立ち入れなくさせられている身であれば常識的にも、法的

に見ても、誰が考えても私は払いすぎていたのだ。当然妻の弁護士Mもそのあたりのことは承知している

から生活費の減額については異議を申し立てることはできない。よって妻は直接私に文句を言ってくるこ

ととなる。私は妻が訴える窮状を聞かされるのが苦痛でならなかった。だが本当のところ如何ほど困って

いたのか、未だによくわからない。確かに贅沢な暮らしからは程遠い母子の暮らしであったのであろう

が、同じマンションに住む息子の同級生やその母親と一緒に焼肉を食べに行ったりしていたことを私は息

子から聞いていたので極端に困っていたことはなかったと思う。何しろ妻は元お嬢様で、実家は貧乏人を

見下すために生きているような金持ちである。私は妻から何度も、これまでの人生で金で苦労しすぎてい

るから性格がひねくれているのだと指摘されてきた。性格がひねくれていることは認めるが、金で苦労し

た記憶はない。どちらかと言うと恵まれてきた方だとも思うのだが、秘密結社の社交クラブにつながるよ

うな育ちからはそう見えたのかも知れない。あるいは金持ちが自己肯定のために貧乏人を侮蔑するフレー

ズというものは古今東西、決まっているのかも知れない。金持ちは対人的に金の力を見せつけて、主導権

を握ろうとする傾向が強い。金持ちの金とは本質的に費消することよりも畏怖させることに絶対価値があ

る。資産で誰かを畏怖させても金自体は減らないから、見せつけることが最も生産的な金のパフォーマン

スであるといえるのだ。そもそも金持ちとはそういう人種なのである。妻は妻の兄Kと同様にそのような

遺伝子を有していたから、同居していた時には絶えず私を貧乏人扱いすることで私を支配しようとした。

貧乏人のささやかな矜持を刺激することが金持ちが貧乏人を搾取してより一層金持ちになるための常套手

段である。もちろん本人は無意識にやっていることだから、まったくそのような自覚はない。客観的なゲ

ーム理論に基づいて考えてみても、仕事をしていない妻が夫を階級的に下等視して得るものはないはずで

あるが、遺伝子プログラムは生物の進化であれ思考原理であれ環境の変化が組み込まれるまでに相応の時

間が掛かるのである。女は結婚すると生存環境が変わるということである。

有数の金持ちは圧倒的多数の貧乏人を基本的に馬鹿にしながら食い物にしなければ絶対に金持ちの地位を

維持できないであろう。万人に対する博愛や友愛精神で本当の金持ちになどなれるものではない。昨年の

サブプライムローン問題に端を発する米国の金融危機は、つまり資本主義の構造には、金持ちが貧乏人の

住宅取得を願う心理を利用して証券化し、金融テクノロジー工学により等比数列的に全世界へ規模を拡大

させたものである。


私は妻の悪口を言うつもりはない。その証拠に私は離婚してからの方が(元)妻と仲良くとは言わないま

でも順調に協力関係を保てている。よって本当はあまり書きたくないのであるが、私の表現は私情を超越

しているのである。それは私がナショナリストだからだ。私にとっての“ナショナリズム”が意味すると

ころを一応説明しておきたい。いわゆる民族主義国家主義ではない。反利己主義のようなものである

が、利他主義でもない。“利己”というものの意義を拡大して、自分と他者、あるいは自分と社会との関

係性を外部から暗黙的に束縛する社会意識や道徳、あるいは強制力の伴う制度などの全体に対して個とし

て責任を持つことである。そこには前回も述べたように機械論的な人間観が根本にあって人間とはパソコ

ンのように複雑ではあるが操作され、意図的に作られるものだという見方がある。人によっては夢も希望

もないような人間の可能性を矮小化させた思想のように捉えられるかも知れないが、一方でメカニカルな

人間存在を見つめないと、機械的肉体を超える魂の価値は見えてこないと私は考えるのである。私は個人

が自分自身をどのように考えているかということの背後に拡がるシステム的な力について考察したいの

だ。見かけの道徳と全体的なシステムの中枢がどのようにつながっているのか見極めなければ気がすまな

い。資本主義的な遺伝子プログラムは道理や道徳とはまったく無縁に発動する。妻が同居している時に私

を貧乏人扱い(というほどでもなかったが)していたのに、別居後に送金が減らされると離婚を拒みつつ

苦境に訴えるという態度は一見したところ調子が良いようにも思えるが、機械的に一定のプログラムに従

っているという観点から考えると矛盾はまったくないことになる。そのプログラミングの内容についてど

う考えるかは人それぞれだと思うが、そもそも家庭とはそういうものなのである。家庭に精神の自立はな

い。金だけの問題ではないと思う。子供にとっても大人にとっても、歪められた閉塞の象徴が家庭だ。家

庭というものは資本主義差別や冷戦下のイデオロギー対立の残滓が縮尺されて投影された4コマ漫画のよ

うなものだ。官憲が推奨する戦時下の国家称揚の戯画のようなものである。本来複雑な社会要因が、わか

りやすい姿(身近な問題)に化身して立ち現れる場であるという意味である。官憲とは現代にあっては政

治家ではなく、官僚であったりマスコミであるということだ。ファシズムの性質は時代によって変遷す

る。

マスの生産力(GDP)が減退すると、制度や大衆意識に深く結びついた社会の末端組織(家庭)がどう

しても利権や搾取の対象になってしまい勝ちである。それで、より一層全体的な洗脳が加速化されると個

人は自らの幸福よりも無意識に権力に迎合することになり、本当の幸福とは何かを考えるよすがすら見失

ってしまうことになるのである。

しかしそれでは一体家庭とは何だと問われるとよくわからないのである。わからないから私は離婚したよ

うなものでもあるのだが、家庭とは本質的に国家権力と切り離せない関係にあることだけは確かであろ

う。だから国家権力に向かい合う対立図式の構図が夫婦関係に根深くも暗い影を落とすことになるのであ

る。我々の生活は日々そのようにして作られている。

話しが逸れてしまったが、妻との結婚当初、妻の兄であるKは30代半ばで1000万円ほどする高級外

車にお抱えの運転手までつけていた。まるで上場企業の役員か知事クラスのような威勢なのだが、亡くな

った父親から相続した財産は一等立てのビルなどもあったようだが、引き継いだ会社の規模は所詮、零細

の身内だけでやっていた不動産管理会社に過ぎないのだ。普通の感覚から見れば、親から相続した財産を

見せつけるような派手な振る舞いは人格を疑われることになるので控えようとするものだが、Kにそのよ

うな慎みの気配はまるでなかった。しかし今よく考えて見るにKに照れや恥じらいがないのは、そのよう

な人種が集うネットワーク(フリーメイソンに繋がる組織)に加入しているからなのである。傍目には金

持ちの社交クラブにしか見えなくとも、世界を支配する権力組織に属しているという自負があるのであろ

う。Kを馬鹿にすることも、一目置くこともできるであろうが、私が思うに自民党世襲議員などという

ものはそもそもKのようなタイプがほとんどなのではないのだろうか。だから政治家は基本的に恥じらい

のない馬鹿であるし、より大きな力の家来に過ぎないのである。


本題に戻すと、私は妻にマンション鍵の原状回復を要求し、その要求が受け入れられない場合は使用貸借

契約を解約する旨を通告することとなった。法律的にはマンションの所有者である私と、そこに住んでい

る妻との契約は賃貸借契約ではなく無償で貸し付ける使用貸借契約であって、基本的には貸主である私が

借主である妻に返還を請求すれば妻は返還しなければならないのである。それで原状回復の期限日、二日

ほど前に妻の弁護士Mから私の弁護士Tに電話連絡があって元の鍵は紛失したから合鍵を作って私に送付

することで勘弁してくれということになった。普通に考えれば、ここで一区切りついたということになる

はずである。ところがそうはならなかったのである。合鍵送付の前提条件としてTとMはとんでもない取

り決めをしたので、事態はより一層悪化することになり、結局私とTは喧嘩別れすることになった。詳細

は次回に書くことにする。あまりさぼらずに出来るだけ早く書きたい。


それから今、副島隆彦氏と佐藤優氏の対談集『暴走する国家 恐慌化する世界』(日本文芸社)を読んで

いるのだが、そこに秘密結社の実像が語られていて大変に面白いので次回、私自身の感想を含めてご紹介

したいと思う。またそこから出来ることなら悪魔論にまで話しを進めたいと思うのだが、少し飛躍しすぎ

かも知れないし実際にはどういう内容になるか自分でもよくわからない。

話しがあちこちに飛んで申し訳ないとは思うが、正直なところ個人的な離婚騒動はもうすでに終わったこ

となので書いていて退屈なのである。しかし、なぜか書かなければならないというような責任感のような

ものも感じる。

私はやはり、ほんの少しだけ変わっているのかも知れない。