龍のひげ’s blog

子供たちの未来のために日本を変革する

消費税増税のインチキ

まやかしだらけの世の中にあって、株価の値動きほど冷徹で正直なものはない。日本企業に将来性が感じられないから、上に突き抜けるエネルギーがまったくない。僅かばかりの利ザヤを掠め取って、一目散に現場から逃げ出す泥棒のように値を下げていくパターンはまさにデフレ下の不景気と人間心理を正確に映し出している。
18日に政府が、今後10年間における日本経済の新成長戦略なるものを閣議決定した。お世辞程度に少し位は株価が上がってもよいものだと思うのだが、見事なまでに反応がなかった。市場はそのようなお座なりの戦略が、絵に描いた餅と同じく何の実効性もないことをよくわかっているのである。しかし絵に描いた餅でも貧困に苦しむ大衆にとっては希望のよすがとなるのであろう。
新成長戦略という空虚な餅の絵は、消費税引き上げという実存的な生活の苦しみとセットになって出された朝食のメニューのようなものだ。ここで騙されてはならないことは、消費税引き上げが必ず社会保障費への充当という枕詞の下で語られるということだ。現在の消費税にあっても地方に交付される分以外は全て、年金や医療などの社会保障に使っているかのような説明をされることが多いが馬鹿も休み休み言いたまえ。消費税分だけどこかの巨大な金庫に札束で保管、管理されている光景を想像している人は生涯、幸せ者だ。そのような人は一から十まで政府や新聞社の主張を鵜呑みにして生きてゆけばよいのだと思う。しかし現実には消費税であろうと何税であろうと、一旦国庫に入ってしまえば皆、同じである。社会保障費と消費税は、本来何の繋がりもない係数なのである。それをあたかも消費税=社会保障であるかのような、ごまかしの論調はいんちき以外の何物でもない。
それならば消費税を福祉目的税にすればよいではないかという理屈も、大衆の根本的な錯誤につけ込んだ悪質なごまかしである。仮に消費税を10%に引き上げても、それは社会保障費全体の何割分かに過ぎない。社会保障費は消費税を含めたすべたの税で賄われなければならないのだから、消費税が社会福祉税に名称が変わったところで根本的に何も変わるところはないのである。それは結局のとろこ“財布”が一つであるからである。あなたの手持ちの財布の中に仕切りを一つ増やしたところであなたの生活スタイルは変わるであろうか。財務省の役人にとっては、消費税が増税されることは社会保障費の増額を意味するものではなく、単に確実に計算の立つ税収増が読めるということ以上でも以下でもないのだ。
もうひとつ見過ごしてはならない点は、消費税引き上げ論が必ず、法人税の減税とひと括りになって我々の目の前に提示されるということである。この点に何ら疑問を感じない人はあまりに鈍感すぎる。法人税の減税は、国際競争力を高めるためというのが常套的な根拠とされているが、これは明らかにおかしい。法人税は人件費などの全ての経費を差し引いた最終的な利益に対して課税されるものである。企業の国際競争力とは何の関係もないではないか。設備投資や研究開発費に対する減税(控除)であればまだ話しは通るが、法人税の減税ということであれば単に政府が大資本家の手持ちの資金を増やすことに協力してあげているだけのことではないか。
そのような性質の法人税減税が、消費税引き上げとタイアップされて提起されていることに、あなた方は一体何を読み取るであろうか。あえて言うまでもないが、政府は財界に対して消費税を引き上げれば国内の景気は一段と冷え込むことになるでしょうが、その代わりに法人税を減税しますよと裏取引をしているのである。国民全体の生活の困窮などにはまったく度外視しているのである。菅直人総理の政治の本質がどういうものかこれでよくわかるであろう。当然、政治と大企業の癒着を深める自民党時代の政治手法に戻っているので、企業献金の廃止などということにはなりようがない。そして小沢と鳩山が倒され、民主党自民党に近い政治の質に染まって行っていることを新聞社を筆頭とするマスコミは大歓迎しているのである。なぜならマスコミ資本自体が大企業であるからである。各マスコミは意図的に、消費税引き上げは止むを得ないという論調の一般コメントばかりを目立たせ、そのような世論の地盤固めの最終段階へと、談合的に結束して入りつつある状況にある。そして、首尾よく消費税引き上げに成功した暁には消費税5%分の売上増大と法人税減税のご褒美がいただけるという寸法となる。
しかし我々一般的な庶民感覚から見れば、消費税とは字義から考えてもわかる通り、これほどのデフレで国内景気が低迷し失業者や自殺者の数が高水準で保たれている状況で、増税対象とすべき分野ではないはずなのである。消費税引き上げの前に消費そのものを活性化させ、その結果デフレから脱却できたと明確に実感できる状況になった時に、社会保障への充当とは無関係に財政健全化の一方法として総体的に検討すべき問題なのだ。
しかし消費税や政治の動向を含め、新聞社を頂点としたマスコミが結局のところ自分たちに都合の良い牽強付会の説ばかりで大衆を洗脳している現状が、現在日本の一番深刻な裏の社会問題であることだけは確かであると思われる。新聞社は一私企業に過ぎないはずである。事実だけを淡々と報道していればよい存在であるにもかかわらず、政治的に動いて日本を弄んでいるようなマスコミ資本は徹底して構造改革の対象とすべきである。日本言論の闇はあまりにも深い。なぜ大多数の大衆はこれほどまでに無垢で素直なのか、私は一生理解できないであろう。