龍のひげ’s blog

子供たちの未来のために日本を変革する

アトピー闘病記 3

それでそのキレーション療法を行っているDクリニックに行き、毛髪検査で体内の金属含有量をチェックすることとなった。頭の毛を何グラムか切り取ってDクリニックからアメリカの検査機関に送られ、1ヶ月後ぐらいに結果が返ってくることとなる。その結果内容は予想外のものであった。水銀の数値が異常に高かったのである。その他の金属は、ほぼ基準値以下であるのに水銀だけが基準値の3倍以上もあった。百分位数で見れば約95パーセンタイルで、これは一般平均100人中自分より含有量が多い人間は5人しかいないということである。Dクリニックの院長であるS氏の説明によれば、水銀の含有量が多い場合は歯の詰め物が原因となっていることが多いということであり、確かに私の口の中には複数箇所に金属の被せや詰め物があった。しかしここ何年も歯医者には行っておらず、これまで何の問題もなく生活してきたのに、この年齢になって昔に充填した歯の金属が水銀を溶出してアレルギー反応を引き起こしているということが、俄かには信じ難いことであった。しかし厳然とした数値となって現れているのであるからそれが原因なのである。金属の劣化や腐食によって長年の間に少しずつ体内に蓄積されてきた水銀が閾値を越えてアレルギーを引き起こしたのか、湿疹が出始めた一昨年の5月ごろに急激に口の中の金属が水銀を放出し始めたのか、そのあたりの推移はよくはわからないが、ともかく私の体内には多量の水銀が存在しそれが原因となって悪さをしているというか、皮膚の表層から水銀という異物を体外に排出させようとする働きが湿疹や痒みの正体であったのだ。いざ原因が判明して見れば、それまでH皮膚科で1年半にも及んで行ってきた治療の愚かさ、馬鹿らしさに愕然とする思いであった。ステロイドの軟膏をいくら塗ったところで体内の水銀の含有量は自然に代謝される以外には、つまりステロイドの効果によっては全く減らない。ある部位に湿疹が出来て、そこにステロイド軟膏を塗っても、体内の水銀は血流とともにあちらこちらに移動をして気の向いた所からモグラ叩きのように顔を覗かせる。いや正確に表現すれば、体が水銀という異物を皮膚から体外に何とかして排出させようと場所を探しているのである。実際に私の症状は、湿疹が最初に出た場所は背中であったがステロイドを塗る内に次第次第に全身に広がっていった。ある部分の湿疹が収まって一時的に症状が寛解したかに思え、そのまま完治していくのかと安心しているとしばらくすればひょんな場所からまた再発する。その繰り返しであった。そしてその内に体の至る場所にステロイドを塗らなければならないこととなり、ステロイドの使用量が増えることはあっても、減らせる方向に転ずることにはならない。これが皮膚科の一般的ないわゆる対症療法の実態であり、私もまさにその通りであった。H皮膚科のジュニア(院長の息子)は、アレルギーの火を鎮火させるためには強いステロイドが必要であると説明していたが、その理屈は実際に体に生じている反応から考えれば全くナンセンスである。特定の部位の皮膚組織に問題があるのではなく、体の中を血流とともに自由に動き回るアレルゲンに原因があるのであるから、ステロイド軟膏を長期間に亘って塗り続けることは鎮火どころかステロイドという新たな起炎物質を体に徐々に沁み込ませ、蓄積させているのと同じである。これは比喩ではなくて現実の実感だ。医者はすぐに自分たちに都合のよい理論を持ち出してきて否定しようとするが、脱ステに苦しんだ人間にしかわからない体感的な事実というものはどうしようもなく存在する。それはどのような権威でもってしても揺るぎ得ない、体が発する声である。
さてそれで私はDMSAという内服薬のキレート剤で体内の水銀を排出する治療を始めることとなったのだが、その時になって歯の詰め物ということで思い出したことがあった。昨年の年末にそれまで1年半通っていたH皮膚科の治療に疑問を感じ、行くことを止めてから脱ステを開始するまでの短い期間にN内科医院という病院に新規で行って血液検査をしてもらった。診察の時にその病院の医者から「歯に詰め物はないですか。」と聞かれたのだ。それで私が、「ありますけど。」と答えると医者はそれきりで何も答えずに黙ってしまった。今年になって1月の上旬に二度目に行った時にもまた「歯に詰め物はないですか。」と聞かれたのだ。「あります。」と答えたが前回と同じようにその医者は黙ってしまった。特にその2度目の訪問の時には、私が勝手に脱ステを始めて皮膚が酷い状態に変化していたことが原因だったのか、いかにも不機嫌そうであり、他に特に何も言う事もないといった感じでさっさと診察を切り上げられてしまったのであった。そのように口が重いというのか気難しい医者の相手をしていると精神的にストレスを感じて疲れてしまいそうなので私は見切りをつけてそれ以来その病院には行かなくなってしまった。しかし後にその時のことを思い出すとどうもその医者は、私のアレルギーの原因が歯の詰め物である可能性があることに気付いていたのだ。それなら何も黙らずとも「歯の詰め物が原因であるかも知れないから一度調べた方がよいですよ。」と一言、言ってくれればよいではないか。何故、黙ってしまうのか。後からよくよく考えればその医者の考えが透けて見えてきそうな思いである。どうせ、こんなところだと思うのだが、歯の詰め物の金属アレルギーが原因であると患者に悟らせたところで、その病院で対応出来ることでなければ、どこか他の病院に移って行くだけのことである。一度や二度来たばかりの新規の患者からはまだ薬代や診察代で充分に稼がせてもらっていないのだから、そこまで親切に教えてやることもあるまいと。しかし医者としての職業上の良心や務めがあるから、最低限のサジェスチョンだけは与えておいてやろうと。皆さんは、どのようにお感じになられるであろうか。一概には言えないけれど、今の時代の医者とはこの程度のものなのである。自分の金儲けを第一に考えて、後はその延長線上の取り計らいなのである。医者と言えども資本主義社会の歯車で動いているのだからある意味においては仕方ないのかも知れないが、どうなのかとも思う。「歯に詰め物はありますか。」と聞かれても、医者ですら様々な体の不調やアレルギーの原因が歯の金属である可能性に即座に結びつく者はほとんどいないというのに、素人がそれだけのサジェスチョンで分かる訳がないではないか。まあその医者は直観的な見識はそれなりに優れていたのかも知れないが、医者としての心根の部分で劣っているとも言える。しかし私の場合は、その後、忘れていたつもりが無意識的に影響を受けたのか、キレーション療法の毛髪検査を受ける運びとなり水銀中毒が判明する結果となったのだから、役に立ったのだとは言える。役に立ったのかは知れないが、正直に言って有難いという気持ちはあまり湧いてこない。
(次回に続く)