龍のひげ’s blog

子供たちの未来のために日本を変革する

ボクシング世界戦観戦記

タオルを投入したトレーナーを責めないも何も、明らかに負けていたではないか。WBC世界バンタム級王者の山中慎介が、日本タイ記録となる13度目の防衛戦で、同級1位のルイス・ネリにTKO負けを喫した。帝拳ジムの本田会長はタオル投入が早すぎたと怒っていたようだが、レフェリーが今まさに試合をストップさせようとしていた気配は映像からもはっきり伝わってきていたし、タオルが投げ入れられたタイミングもレフェリーがストップさせたであろうタイミングと2~3秒ほどしか違っていなかったであろう。私が長年、ボクシングの試合を見ていて感じることは、ボクシングの選手や関係者はいつも負けてからパンチが効いていなかった、それゆえにストップされたのは不当な処置であったなどと原始的なことを言うが、そういう問題ではないと思う。完全にガードがなされているのであれば話しは別だが、数発、効果的なパンチをもらってその後に一方的に連打され、全く反撃できないような状態になっていると見做されると、効いていようが、効いてなかろうが止められるのである。ボクシングはそういうスポーツなのだから仕方がないではないか。私が見ていた限りにおいてもTKO負けになった4回だけでなく、1回から挑戦者のルイス・ネリの攻撃力の方がはるかに上回っていたので、仮に4回がゴングに救われて5回以降に進んでいたとしても、勝ち目はなかったのではないかと思う。それにしてもルイス・ネリのチャンスになった時の突進力にはすさまじい気迫が感じられて感心させられたものである。全く容赦がないというか、相手に休む隙を0.1秒たりとも与えずに攻め続けるもので、この光景を見せつけられれば、タオルを投入したくもなるのは無理もない。だから反対に言えば、挑戦者としてチャンピオンベルトを奪取しようとするならば、効いているとか効いていないなどと主観に過ぎないことにこだわるのではなくて、そういう光景をレフェリーや観客に見せつけなければならないということである。それがボクシングの本質だと思う。山中が負けたのは残念ではあったが、それを観戦していた同ジムの村田諒太が、セコンドが割って入ったタイミングについて「誰もよしあしをつけることはできない」と指摘しつつも山中の「目は生きていたし、(意識は)落ちていなかった」などとコメントしているのが気になる、というか気にいらない。そんな微妙な発言をするよりも自分がミドル級のタイトルを本気で取りにいくのであれば、何よりもルイス・ネリのここぞという時の攻撃精神を見習わなければならないはずである。前回のエンダム戦の時も判定が不可解であると騒がれたし、私もおかしな判定であったとは思うが、それでも村田がエンダムからダウンを奪った後に、安全策を取って腰が引けた戦いをしていたことは事実である。またエンダムがダウンを奪われた後にさほどのダメージを見せずに手数を出し続けていたことも事実である。だから今のボクシングはKOで決着がつく以外は、相手のパンチがダメージとして効いていたかどうかというようなことを主観的に主張してもほとんど意味がないのである。あくまでも外観的に攻撃のパフォーマンスを見せ続けられるかどうかということが全てなのである。そういうことが理解できていないと序盤で1回ダウンを奪ったからといって、後は守りに入ってしまって消極的に試合展開を進めていると、判定で負けにされても文句が言えないということにもなる。だから繰り返すが、村田はルイス・ネリのアグレッシブさにこそ学ぶべきなのである。またそういう気持ちと理解がなければ、何度、挑戦しても同じ結果になる可能性が高いということだ。