龍のひげ’s blog

子供たちの未来のために日本を変革する

道徳意識に関する問題

さて皆さんに社会的な規範意識と倫理観、そして生活上の危機管理能力を問う設問です。次の設問は来年度の国立大学の入試問題に出題される可能性もあります。現在、受験生の方々や受験生の両親も真剣に考えていただきたいと思います。
次のA、B二つのケースにおいて、当事者が社会的に問題とされるそれぞれの事実を知らなかったことが真実であると仮定した場合、どちらのケースが道徳的により問題性が大きいと見做せるであろうか。理由を含めて千字以内で答えよ。

A、タレントSはイメクラの性風俗店で16歳の少女から性的なサービスを受けた。Sは女性従業員が18歳未満であることを知らなかった。

B、タレントMらは所属事務所を通さない闇営業でグループの忘年会に参加した。何年か経ってからそのグループは振り込め詐欺の犯罪者集団であったことが発覚したが、Mらは忘年会に参加した時点ではその事実を知らなかった
さあどうでしょうか。あなたならどのように考えますか。模範解答という訳ではないですが、簡単に解説することにします。一般的にはAの方が問題だと考える人が多いのではないかと想像されます。その理由は子供に対する淫行は、児童福祉法や各自治体が制定する淫行禁止の条例に抵触する犯罪のイメージがあって、犯罪性があるということは、イコール道徳的にも問題があると見做すことは当然だと考えられるからだと思われます。一方でBの事例はタレントが闇営業とは言え、忘年会のイベントに参加しただけで反社会的な集団であることを知らなかったことが事実であったとすれば、道徳的に糾弾したり責任を厳しく問うことには無理があると考えられるからではないでしょうか。
しかし私の解答では答えはBです。Bの方が明らかに道徳的な問題性が大きいと言えます。その理由は仮に知らなかったことが事実であるとすれば、その行為に「悪質性」はなかったとして酌量の余地があるとは言えます。ということは、不知で悪質性がなかったとすれば、行為の「結果責任」が道徳性との関連において考察されるべきです。大人の行為であるのだからそれは社会的に当然のことではないでしょうか。Aの未成年者への淫行には果たしてどのような結果責任があると言えるでしょうか。別に私は個人的に擁護するつもりはありませんが、性的なサービスを提供する少女とそれを買う客双方の合意の下で行われていることなので結果責任の観点から見ればプライベートな問題であると言えます。またその行為に対して警察や検察が法令違反で特定の客を逮捕したり、起訴するかどうかということに関してもきわめてグレーゾーンの取り計らいであって明確な線引きが存在するものではありません。事例にもよるでしょうが淫行というものは個別の案件が社会全体への重大な結果責任が伴うものではなくて、その取締りはほとんどがいわば「見せしめ」のために行われるものです。仮に法律違反の脱法行為であったとしても、その個別の犯罪性や反道徳性が問題視されるというよりも摘発し、辱めを与えることによって、社会全体の風紀の乱れを糺したり、健全な秩序を維持することを目的として検挙がなされるものと考えられます。それはそれで社会的に意義のある権力の発動であるかも知れませんが、取り締まり対象者の非道徳性を決定付ける根拠とすれば幾分、弱いということは言えるのではないでしょうか。
一方でBの闇営業については、所属事務所や企業内のコンプライアンス違反ということはあるでしょうが、ただちに法令違反として警察の捜査を招くものではないゆえに、不知であれば仕方ないと考える人も多いのかも知れません。しかし仮に知らなかったとしても、その結果責任が社会に甚大な被害をもたらすものであることは明らかです。なぜなら特殊詐欺をする人々の忘年会にタレントが参加し、場を盛り上げることによって、メンバーの犯罪行為に対する罪の意識が薄れ、モチベーションが上がることは容易に想像されることです。というよりもそのためにこそタレントが場に呼ばれたのであろうと考えられます。タレントが忘年会に参加することによってその後の詐欺の生産性が向上するということです。仮に当日参加したタレントに合計300万円のギャラを手渡していたとしても、電話詐欺の精神的なモチベーションや生産性が上がっていれば、簡単にその元は回収できたのではないでしょうか。これでは知らなかったことが事実であったとしても(知っていれば尚更のことですが)、結果的には犯罪行為に加担しているのと同じことです。Aの淫行などとは比べようもないほどに反社会的で、反道徳的な行為であるとは言えないでしょうか。
さて皆さんの解答はどのようなものになったでしょうか。