龍のひげ’s blog

子供たちの未来のために日本を変革する

布団の中で考える私


布団に入って体が温まってくると

私は、だんだんと夜の底に溶けてゆく。

ミルクのように白々しい私の意識は、コーヒー色の夜空に

攪拌されて消えてゆく。

ああ、私を手放すとは何と気持ちがいいことであろうか。

死ぬ瞬間にも人はこのような

宇宙と一体になる甘美な感覚を味わうのであろうか。

しかし夢の中の私は幸福とは言えない。

いつも見知らぬ町で道に迷い、焦っている私がいる。

虚構の世界で何故私は迷うのだ。

そもそも私とは一体何だ。

死んだ後にも夢のように私は存在するのか。

あの世が本当にあると誰か言うのか。

それならよく考えていただきたい。

肉体がなく、名前もない私の意識が

どうやって死後、私であり続けることが出来るのだ。

我と彼の区別がない世界で

私に何の意味がある。

私という“こだわり”は物資世界にしかあり得ないはずである。

死んでしまえば恐らくは虚無だ。

いや、ちょっと待て。そのような非情な考えは間違っているし許されない。

大人はいいが、幼くして亡くなった子供たちの私はどうなるのだ。

あのような無垢で清浄なる魂が霧散してしまうことなど、全能なる神がお認めになるはずがない。

よってあの世が存在する可能性は高い。そうであるべきだ。

そしてあの世とは全体と部分、融合と個別の可逆なる世界である。

忘却の中で、いつでも私が私自身に立ち返れる世界でもある。

やっぱりナンセンスだ。あまりに通俗的過ぎる。

だからこの世に霊能者や預言者がはびこるのである。

ああ私は迷っている。あの世でも私は夢の中のようにさ迷い続けることになるのか。

それだけは、いやだな。ああ、それだけは勘弁してくれ、と

あれこれ考えながら

あの世があろうと、なかろうと

夜に溶け、眠りの中へ消えてゆく私は、

温かい布団の中にいる。